研究課題/領域番号 |
23246006
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
三谷 誠司 独立行政法人物質・材料研究機構, 磁性材料ユニット, グループリーダー (20250813)
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研究分担者 |
葛西 伸哉 独立行政法人物質・材料研究機構, 磁性材料ユニット, 主任研究員 (20378855)
介川 裕章 独立行政法人物質・材料研究機構, 磁性材料ユニット, 研究員 (30462518)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 格子整合 / 2重トンネル接合 / トンネル磁気抵抗効果 / 共鳴トンネル効果 / スピントロニクス素子 |
研究概要 |
スピン依存共鳴トンネル効果は、強磁性体からなる2重トンネル接合や擬2重トンネル接合において発現し、新規高集積度磁気メモリのためのダイオード特性と巨大な磁気抵抗効果を兼ね備えることに加え、共鳴電子準位へのスピン注入などの未開拓な物理現象・機能特性の研究を可能にする。しかし、これまで強磁性金属を用いた高品位2重トンネル接合の作製の報告はほとんどなく、理論予測や素子応用上の期待に反して、スピン依存共鳴トンネル効果の実験的研究は進展していない。本研究では、この状況を打破するために、格子不整合がほとんどないスピネルバリアとホイスラー合金電極を利用することによって平坦性と結晶性において格段に優れる2重トンネル接合を作製し、その特性評価と機能発現機構の解明を行う。 本年度は共鳴準位の形成のための薄い強磁性電極層の作製と品質改善に取り組み、まず、界面垂直異方性に関して種々の結果を得た。Fe基合金電極において予想を上回る大きさの垂直磁気異方性が発現し、その起源について種々検討を行った。また、Fe系のみならず、Co基合金電極においても有意な大きさの界面垂直磁気異方性が得られた。垂直磁気の磁化配列やスピン軌道相互作用の存在が共鳴トンネル効果にどのような影響を及ぼすかは非常に興味が持たれるところである。また、スピネルバリアを用いた実験では、カチオンサイト不規則化によるバンド折り畳み効果の抑制現象について基礎的な知見を得た。スピネルバリアを用いたトンネル接合では、バンド折り畳み効果によって新たな伝導チャネルが形成されるが、そのことによってFe電極では磁気抵抗効果が小さくなる。一方、ホイスラー合金ではそのような磁気抵抗効果の現象はほとんどないことが実験結果と理論的考察から推察される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高品位の強磁性電極層の形成ができた証拠として、大きな垂直磁気異方性が得られており、ナノ構造の創成において一定の成果を挙げている。また、界面磁気異方性に関する実験結果やバンド折り畳み効果の検討については、計画を越えた内容であり、十分評価できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
積層構造の創成や関連する物性・機能性の観測について十分結果を得てきたので、今後は研究の中心課題である共鳴トンネル効果の観測に注力する。共鳴トンネル効果を中心とした、磁気伝導物性の解明に力を入れることにより、本研究の目標達成を目指す。
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