研究課題/領域番号 |
23246007
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
飯田 厚夫 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (10143398)
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研究分担者 |
高西 陽一 京都大学, 理学(系)研究科, 准教授 (80251619)
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キーワード | 液晶 / 放射光科学 / 結晶工学 / 共鳴X線散乱 / 相転移 |
研究概要 |
スメクティック液晶にキラリティを導入することにより層間に独特な分子配向関係を示す副次相が現れる。これらの副次相の理解のためには分子間相互作用の解明が不可欠でありそのための説明モデルも提案されているが、モデルの妥当性を検討するためには温度や電場に対する副次相の分子秩序とその相転移を精密に決定する必要がある。このために、申請者らの開発してきた局所共鳴X線散乱法を一層高度化し、世界的にもユニークな解析を行う。 初年度の平成23年度は高効率2次元ピクセル型X線検出器PILATUS 100K(DECTRIS社、スイス)の導入により大幅なS/B比および測定精度の向上したシステム構築することとした。放射光X線マイクロビームステーションとして長い実績を持つシステムに本検出器を導入するとともに、検出器の制御システムを既存のマイクロビーム制御システムにTCP-P通信により統合して、既存の制御システムから検出器を制御できるようにした。 また液晶の骨格部にBrを導入した新規Br含有キラル液晶の合成にも成功しており、既に放射光マイクロビームを使った基本的物性研究を開始している。制御システムから各種調整機器・測定機器を制御できるようなシステムを構築する試みを行っており、限定された条件ではあるが電場誘起相転移に伴う分子秩序の変化を明瞭にとらえることにも成功している。 新規試料を用いて精密な印加電場-温度相図を作製するために、最終的には微小複屈折測定システムとの複合化を検討しており、そのため新しい光学配置、すなわち反射型の試料配置についても準備実験を開始し始めた。試料ホルダーの構成・材質・試料作製法などについて基礎データを得ている。研究代表者(飯田)と研究分担者(高西)は放射光利用実験を共同で遂行するとともに頻繁に情報を交換しており、また研究協力者(福田敦夫)とは実験結果を共有するとともに理論面からのコメントももらっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記述した「研究実施計画」に沿って研究を進め、本研究の中心となるX線検出器の導入も順調に進み、既に実験データが得られるようになっている。
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今後の研究の推進方策 |
放射光X線マイクロビームシステムの高度化を本格化する。一つは各種外部パラメータを変化させた系統的な精密測定を自動で行う仕組みを構築する。更に試料周りの自由度を向上させるための光学系の設計製作を行う。一方Br含有液晶合成試料と混合試料の精密な印加電場-温度相図を作製するために、微小複屈折測定システムを構築するための光学系を実現する。また、本年度は実験室で必要な精度を得るための液晶混合比、温度、電場などの条件の検討も本格的に進める。
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