研究課題/領域番号 |
23246007
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
飯田 厚夫 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器科学支援センター, シニアフェロー (10143398)
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研究分担者 |
高西 陽一 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80251619)
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研究期間 (年度) |
2011-05-31 – 2014-03-31
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キーワード | 液晶 / 放射光科学 / 結晶工学 / 共鳴X線散乱 / 相転移 / 分子間相互作用 / X線マイクロビーム / 局所解析 |
研究概要 |
スメクティック液晶にキラリティを導入することにより層間に独特な分子配向関係を示す副次相が現れる。これらの副次相発現の原因となる分子間相互作用について提案されているモデルの妥当性を評価するためには温度や電場に対する副次相の構造を精密に決定する必要がある。この目的に最適の申請者らの開発した局所共鳴X線散乱法を高度化し、世界的にもユニークな解析を行う。 高効率2次元ピクセル型X線検出器を用いた局所共鳴X線散乱システムを構築し、放射光科学研究施設のマイクロビームシステムと統合化した。また高精度X線マイクロビーム集光素子を製作し、ほぼ理論通りの集光特性を持つ光学系が完成した。さらに液晶の物性測定用に必要な各種調整機器を自動制御できるようなシステムを構築した。このことによりマイクロビーム特性を生かして印加電圧や試料温度などの外部パラメータを制御した状態での液晶の相秩序に関する系統的測定を自動で行う仕組みが構築できた。また試料加熱用電気炉の改良に取り組み、試料の熱温度均一性の向上、配向試料作製法の改良を行った。 液晶分子の骨格部にBrを導入した新規Br含有キラル液晶の合成に成功しているが、このBr含有液晶と多様な副次相を示す液晶を混合した試料の精密な印加電場―温度相図を作製するための微小複屈折測定システムを構築した。混合試料の局所RXS実験ではSmC*とSmCA*相の間にフラストレーション構造に関係していると思われる新規な5層周期構造を見出し、計算との比較によりその分子配列を決定した(論文印刷中)。またフェリ相・フェロ相電場誘起相転移近傍においてこれまで報告されたことが無い12層にわたる長周期構造が関係していると思われるRXS反射を見出した。3層周期フェリ相からフェロ相への転移に電場下では中間相が存在することが初めて明らかにされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実施計画」に沿って研究を進め、実験システムの構築も順調に進み、また目的の一つである新規液晶層を発見し論文にまとめている。またこれまで報告されていない長周期の相も相境界に発見されている。狭い温度範囲に現れる新しい相の探索も系統的に行っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に論文にまとめた新規5層周期構造に続き、最終研究年度の平成25年度は新規液晶相の発見とその発現機構に関して実験解析検討を更に進める。フェリ相・フェロ相電場誘起相転移近傍においてこれまで報告されたことが無い12層にわたる長周期構造が関係していると思われるRXS反射を平成24年度に見出したが、平成25年度はこの構造につき電場―温度相図に基づくより詳細な実験を行い構造とその起源を解明する。また相図に基づき相転移点近傍の新規副次相の発見に努める。更にこれまで多くのRXS実験で利用されているSe含有試料も入手しているので、これまで発見できていない新しい周期相の探索を本システムの空間分解能の高さを利用して理論家との議論の元に行う。一方、RXSで標準的手法になっている反射X線光学系の準備も進めてきているので、平成25年度は自己保持膜による実験も合せて高精度新規液晶相の探索を進める。
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