研究課題/領域番号 |
23246015
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研究機関 | 大阪電気通信大学 |
研究代表者 |
越川 孝範 大阪電気通信大学, 工学部, 教授 (60098085)
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研究分担者 |
安江 常夫 大阪電気通信大学, 工学部, 教授 (00212275)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 電子顕微鏡 / 表面・界面物性 / 超薄膜 / 磁性 |
研究概要 |
本研究は、「高輝度・高偏極・長寿命という特性を持つスピン偏極低エネルギー電子顕微鏡(SPLEEM)」をベースにして数10μ秒オーダの高速測定可能な新しい電子顕微鏡「高速顕微スピンナノスコープ」を製作し、スピントロニクスを用いたメモリ開発等に必要な磁性の顕微ダイナミックスを明らかにすることを目的としている。前年度に高周波用マニピュレータを導入したのに引き続き、今年度は高電圧(20kV)印加が可能な専用高周波ケーブルの設計・製作を行った。ストロボ法による高速観察では、パルススピン偏極電子ビームを発生させる必要がある。このためにパルスレーザを購入し、パルスビーム発生試験も行った。これと並行して、垂直磁化を有するCoNi磁性薄膜形成過程に関する基礎的な実験も前年度に引き続き行った。ここでは高輝度・高スピン偏極低エネルギー電子顕微鏡を用いて、磁区構造形成の動的な観察を行った。これまでに、CoとNiの積層薄膜において、垂直磁気異方性が発現することが明らかとなっている。そこで今年度はCoとNiの膜厚の比を変えたとき、および積層順序を逆にしたときの磁区形成過程の観察を行った。結果として、膜厚の比や積層順序には依存せず、Ni蒸着時には垂直磁気異方性が誘起され、Co蒸着時には面内磁化が現れやすいが、積層が進むにつれCo蒸着後でも垂直磁気異方性が安定化されることが明らかとなった。この結果は、Co/Ni界面の磁気異方性により積層によって垂直磁気異方性が発現することを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高周波パルスを印加するための専用ケーブルの製作やパルススピン偏極電子ビーム発生など、高速観察に必要な準備がほぼ終了したので、計画通りと言える。ただ、最終段階になって試料ホルダーとのインピーダンスマッチングが悪いことが判明し、その再設計・製作のために経費の繰り越しを行うことになった点が、やや問題となっている。
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今後の研究の推進方策 |
現時点では研究計画を変更することなく、当初の研究計画にしたがって研究を推進していく予定である。次年度には試料ホルダーの製作を早急に終了し、高速顕微スピンナノスコープによる磁性の顕微ダイナミクスの観察に取り組んでいく予定である。
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