2001年に高次高調波によるアト秒パルスの発生が報告されて以来、理論および実験の両面から盛んに研究さているが、未だにその発生や計測は容易ではなく、期待される応用に対してもその強度は全く不十分である。本研究では、我々が考案した赤外パルスを重畳する2波長励起法を用いてマイクロジュール級の高強度単一アト秒パルス光源を構築し、その単一アト秒パルスを用いて観測される2光子二重電離のデータと理論計算との比較から、電子相関時間とその断面積を確定し電子相関に関する物理機構を解明することを目的としている。 平成25年度、前年度までに実施した赤外2波長励起法によるマイクロジュール級単一アト秒パルス発生法をさらに短波長域への拡張の可能性を検証するとともに、Generalized Double Optical Gating法との比較を行った。加えて、He原子の2電子二重励起状態のダイナミクスに関する実験研究を実施するための、EU光学系の設計をした。複数の電子が同時に励起状態に押し上げられた多電子励起状態の関与する過程は、強い電子相関に支配されるので、電子相関を理解するに相応しい系である。He原子は、多電子励起状態のうち最も基本的な2電子励起状態を観測する上で、理想的な系である。このHeの2電子励起状態は、座標系を適切に選ぶことにより、2電子の折れ曲がり振動や回転といった集団的運動をすることが知られている。今年度は、波長約30eVの単一アト秒パルスを用いてこのHe原子の2電子二重励起状態のダイナミクスを計測するのに必要な光学系を設計した。
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