研究実績の概要 |
ナノ生産工学においてその重要度が高まっているレジスト,高分子,バイオ素材等のソフトマテリアルを加工対象として,50nm以下の空間加工分解能でナノ修正加工が可能な新しい概念の光触媒ナノ粒子工具チップ・マイクロ加工工具の開発およびその有効性の検証を目的とする.当該年度は,本プロジェクトの最終年度であり,前年度までに得た理論的知見,および開発実験装置を総動員し,提案コンセプト実証実験を試みた.具体的には以下となる.
前年度に試作を行った空間複合光場制御装置を用いて,全方位ナノ修正加工を実現するための酸化チタン光触媒ナノ粒子工具チップの実時間動的位置制御を実現した.次に,提案コンセプトである,加工分解能の回折限界超越性の検証実験を試みた.ここでは,将来的にナノ修正加工が要求される実際のエバネッセント露光マイクロ光造形樹脂を加工対象とし,前年度に確立した原子間力顕微鏡位置同定方法を適用した.結果,遠隔光場により空間位置制御された粒径250nmのルチル型酸化チタン光触媒ナノ粒子に対して120mW/cm2, 5分のUV照射を行うことで,レーザー照射スポットサイズ410nmを下回る直径300nm,深さ90nmの凹状加工痕を確認することができた.また,加工溶媒の過酸化水素水濃度によって加工深さを高精度制御できることを見出し,適切な過酸化水素水濃度(0.15w%)に設定することで,高い再現性をもって8nm前後の微小深さ加工が可能であることを示した.これにより,提案手法が,レジスト,高分子,バイオ素材等のソフトマテリアルに対してサブ10nm加工分解能の可能性を有していることを示した.さらに将来的な実践性の観点を考慮し,空間複合光場によるマルチトラップにより,同時複数加工が実現できることを実証した.
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