研究課題/領域番号 |
23246030
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
南 一郎 岩手大学, 工学部, 准教授 (00183111)
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研究分担者 |
鈴木 章仁 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (30235931)
三宅 晃司 独立行政法人産業技術総合研究所, 先進製造プロセス研究部門, 主任研究員 (30302392)
佐々木 信也 東京理科大学, 工学部, 教授 (40357124)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | トライボロジー / イオン液体 / 多機能潤滑剤 / トライボ化学 / 分子設計 / 量子化学計算 / 摩擦機構 / 熱分解機構 |
研究概要 |
複合機能型潤滑剤の基本骨格として組み合わせの自由度が高いイオン構造に着目して設計を進めた.すなわち目的の機能を有するアニオンあるいはカチオンを複数組み合わせることによって必要な機能を備えた分子を構築する.このモデルとしてイオン液体が適しているが金属材料に対するイオン液体の腐食性が問題となった.これはアニオン構造に含まれるフッ素原子が主な要因と考察しH23年度はハロゲンフリー型のアニオンを設計して評価した.その結果スチール材料の腐食性は顕著に改善した.H24年度次の研究を進めた. 1.ハロゲンフリータイプのイオン液体を中心に評価と解析を進め,不純物として混入する水が摩擦特性と安定性に悪影響を及ぼすことを確かめた.大気から吸湿してイオン液体の特性が劣化することが懸念され,実際に雰囲気を制御した摩擦試験によってこれを確かめた.さらにin situ分光測定で吸湿水の水和状態が吸水量に依存して変化することと水和状態が金属の腐食促進に影響することを明らかにした. 2.複合機能設計の要諦である異種カチオンおよびアニオンの混合ではマクロな粘性と摩擦係数には加成性が見られたが総合的なトライボロジー特性は単純な混合則は成立しないことが判った. 3.ハロゲンと水の混入のほかに金属材料を腐食する要因としてイオン液体自体の導電性があげあれる.すなわち摩擦面と非摩擦面に導電性液体が介在することによってガルバーニ電池型の腐食が起こる.トライボ化学反応で摩擦面上に絶縁体皮膜を形成すればこれを防止できる.接触抵抗を同時に測定する摩擦試験でその有効性を検証した. 4.イオン液体は熱安定性に優れるとされているが,高純度のイオン液体で構造と安定性を比較することは容易でない.そこで量子化学シミュレーションを適応して結合解離エネルギーを求めてカチオンの安定性を推定したところ,従前の実験結果に照らして妥当であることを検証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イオン液体の実用化にあたって大きな障害となる金属に対する腐食性を抑制する方法を見いだし,その機構解明に着手した.熱安定性を評価する量子化学計算は実験結果によりその妥当性が支持され,H25年度の本研究の解析手法として適応可能であることがわかった.
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今後の研究の推進方策 |
H23-24年度に得られた成果に対して「分子設計-機能(特にトライボロジー特性と腐食性)-分光分析-量子化学計算」のフローに基づいて構造活性相関モデルを構築する.本課題の最終年度として各研究者が前年度までの補完データを取得するとともに研究者間の連携を強化して上記計画を実施する.
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