研究概要 |
微小機械の潤滑や極微量潤滑において重要な,摺動面にのみ液体潤滑膜を塗布する潤滑(薄膜潤滑)が重要となっている.これには,高精度にすきま制御した条件で潤滑膜の発生する水平・鉛直方向の力の計測が必須である.さらに,潤滑膜の変形をリアルタイムに把握することが求められる.力学応答計測では発生力減小に対応して高感度化が必要であり,膜観測では摺動部微小化に対応して面内分解能を向上する必要がある.本研究では,課題を克服する新規な計測法を提案し,潤滑膜の発生する水平力・鉛直力および膜変形を同時計測し,従来の潤滑理論の適用限界を明らかにすることで薄膜潤滑の理論基盤を構築することを目的としている. 今期は,薄膜潤滑現象の定量化に向けて,高感度な力学応答計測系,高分解能な膜観測系の構築を図った.力学応答計測においては,先端を球状に加工した摺動プローブを加振し潤滑膜に接触させ,その際の水平方向の振幅・位相応答により粘弾性力を得た.また,鉛直力は,音叉型センサの固有振動数変化から得た.音叉としてはマイクロマシン技術を用いた水晶製のマイクロセンサを用いた,水晶振動子は振動減衰が小さく高感度化が期待できる.また,センサの製作はメーカに委託した.原理確認のため,やや感度の低い仕様のセンサを用いた.当初のねらい通り,摺動プローブの接着により測定性能への大きな影響は見られなかった.音叉の面内方向の剛性が低かったので,剛性補強用の支持枠を設計・試作し,センサを接着して用いた.これらに加え,検出系の回路を工夫しSN比の向上させ,0.1μNオーダの力分解能達成に目処をつけた.さらに,高感度化をねらった仕様のセンサを設計・試作した.また,膜観測系については,二段階結像型エリプソメトリー顕微鏡を設計・試作し,面内分解能サブμmの原理確認に成功した.また,膜厚分解能向上のため照明系や光源を検討を進めた.
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに構築した各力学応答計測系と膜観測系について,当初計画に従って各計測法の改良と各計測法の統合に向けた検討を進める.計測法の改良としては,鉛直力測定用の水晶振動子型音叉センサについて高感度化を試み,状況に応じて圧電検出に加え外部の測定系による検出など検出方法を改良し力分解能の向上を検討する.膜観測系については,照明系の改良による膜厚分解能向上を図る.各計測法の統合に向けた系としては,まず水平力・鉛直力測定系を統合した系および水平力測定系と膜分布観測系の統合を検討し,その後力学測定系と膜観測系の統合を検討する.
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