研究課題/領域番号 |
23246035
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
丸田 薫 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (50260451)
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研究分担者 |
中村 寿 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (40444020)
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研究期間 (年度) |
2011-05-31 – 2015-03-31
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キーワード | 代替燃料 / 化学反応機構 / 燃焼 |
研究概要 |
温度分布制御マイクロフローリアクタにおいて,分光計測による化学種計測を導入することを目指して研究を進めている.これによりバイオ燃料や合成燃料を含む燃料多様化時代に対応する,圧力・温度域毎の高精度実験により検証された,高精度な詳細化学反応機構の構築および素反応レベルでの燃焼反応制御の基礎学理構築を目的としている. 二年度目である平成24年度は,引き続き実用燃料における標準燃料(n-デカン,イソセタン,n-セタン)を用いた反応帯分離実験を行ったほか,さらに天然ガス構成成分であるメタン,エタン,プロパン,正ブタンの着火特性比較実験,これら燃料に対応する数値計算,また分光計測系の構築を完了したうえで,OH活性化学種の光学計測を達成した. その結果,従来のオクタン価・セタン価の評価に加え,反応帯位置からメタン価についても議論できることを明らかにした.実験室建屋全体の耐震工事が24年7月に終了後,波長可変光源の導入を進め,年度内にOH基の分光計測を完了した.また同時に,ガスの局所サンプリングとGCまたはGC-MSによる組成分析の高度化のため,ガラスの極細管を持つサンプリング機構を試作し,計測精度の向上を進めた. これまでに達成した計算負荷の大きい大規模高級炭化水素,イソオクタン(857 化学種,3606反応式)やディーゼル燃料・ジェット燃料を想定したn-セタン,i-セタンの素反応数値計算をベースに,すす生成機構への展開や,CFDへ展開するための簡略化反応機構の構築ロジックの検討も開始している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度には急遽,実験室の入る建屋の耐震工事が行われる運びとなったため,平成24年度当初はやや計画より遅れていたが,平成24年度の順調な進捗により遅れを取り戻すことができ,光学計測までを達成できた.並行して行ったガスサンプリングについても,精度向上を可能にする新たなサンプリング機構を製作し,高精度化学反応機構検証を行うための体制が整ったと言える.対象燃料も,ガソリンを想定したn-ヘプタン,イソオクタン,トルエンに加え,ディーゼル燃料を想定したn-デカン,イソセタン,n-セタン等までを実験および数値計算の両者によってカバーできることを示した.天然ガス成分の構成成分個々の役割を明らかにするなど,当該のマイクロフローリアクタ装置が,気体から液体状態に至る幅広い実用燃料をターゲットにした種々の燃焼反応研究に適用できることを実証し,サンプリングから光学計測に至る計測技術も確立しつつある.
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今後の研究の推進方策 |
気体から液体に至る幅広い実用燃料における実験技術の確立と,オクタン価・セタン価・メタン価などの評価指標との比較,それぞれの大型燃料における現象を再現する大型数値計算の実施,さらには化学反応機構の検証,改良を目指した高精度サンプリング法,光学計測技術の構築と,独自のマイクロフローリアクタの潜在力を確認し,研究展開していく準備が整ったと言える.今後は,衝撃波管,高速圧縮装置等の既存装置によるデータと比較対象する場合の理論的背景に踏み込みつつ,化学反応機構に関する実験手法としての確立と普及も視野に入れた活動を実施する.現在,手法導入の問い合わせが来ているサウジアラビア王立大の燃焼研究センターや,化学反応機構研究で世界のトップを走る米国ローレンスリバモア研究所やアイルランドの大学とも連携しつつ,実用燃料を想定した燃焼器設計に資する詳細化学反応機構の構築を目指し,研究をすすめる所存である. また幸いにして平成25年4月に本手法は,市村学術賞を受賞する運びとなった.広く本手法の可能性と意義が認められたと考えており,本手法の対応条件の拡大(実用燃焼器レベルまでの高圧対応化,すす・PM等の排出物の生成機構とその抑制手法の解明)を視野に入れさらに研究を進めて行きたい.
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