研究課題/領域番号 |
23246038
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高木 敏行 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (20197065)
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研究分担者 |
三木 寛之 東北大学, 国際高等研究教育機構, 准教授 (80325943)
竹野 貴法 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00451617)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 導電性硬質炭素膜 / 先端機能デバイス / 機能性コーティング / モニタリング |
研究概要 |
本研究では様々な構造物を対象に、従来の定期的な検査に代わり劣化・損傷の状態を1枚のシートで計測可能な薄膜センサを設計し、長期モニタリングを簡素かつ高度化する基礎原理および要素技術の確立を目指している。 平成23年度はマルチセンサ薄膜およびセンサ形状の基礎原理について電気特性と磁気特性の2つの観点から検討を行い、外場に対する応答の評価が可能なセンサ材料を提案した。また、非晶質炭素膜(DLC膜)に金属を添加した導電性硬質炭素膜(MeDLC)薄膜を試作し、電気・磁気的特性の評価を行なった。これらの材料はセンサとしての基本的な性能を有しているが、ダメージセンシングにはセンサ特性と劣化状態の相関を定量的に明らかにする必要がある。そのため、平成24年度にはMoDLCの繰り返しひずみに対する材料の劣化評価及びセンサ形状と測定感度の関係性評価を実施した。 その結果、繰り返し歪みを付与する振動試験において、曲げ回数と共に抵抗が増加することを明らかにした。ここでは、膜の部分疲労によって電気抵抗が変化することを定性的に示し、Mo-DLC膜の疲労センサとしての可能性を示すことが出来た。また、センサ形状と歪み感度について関係性を評価した。具体的な実施項目は以下の通りである。① 材料設計 マグネトロンプラズマCVD装置とスパッタリング堆積装置を用て、ナノクラスタ金属を含んだDLC薄膜を作成した。② 成膜技術 測定感度向上のためのセンサ形状を検討し、試作した。③ 電磁機能評価 繰返し応力に対する応答性、形状による機能特性などを測定した。④結合状態評価 炭素の結合状態の経時変化を測定し、薄膜内部の劣化プロセスを明らかにした。 ⑤微細機械特性評価 超微小押し込み硬さ試験等を行い、薄膜のマクロ-ミクロ材料特性と劣化プロセスとの関係性を明らかにした。⑥材料劣化と非破壊的手法による検出方法の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24度は化学気相合成法と直流スパッタ法により作製したMeDLC(Mo添加)膜の劣化過程について検討し、繰り返し歪みを加える振動試験において曲げ回数と共に膜の機械的強度、および膜を構成する炭素間の結合状態が変化することが分かった。ここでは、DLC膜中の金属クラスターの有無が結合状態の変化と関連し、MoDLC膜の電気抵抗が変化する原因として、出力信号の変化が炭素の結合状態に由来する可能性を示し、DLCと金属クラスター周辺の炭素の結合状態が深く関係していることを見出した。つまり、金属含有量や粒径はセンサの感度に大きく寄与し、疲労サイクル数と膜組織変化との間に相関関係が得られた。 従って、平成24年度までに遂行された研究によって、MeDLC膜の疲労センサとしての可能性が示されたとともに、疲労・劣化過程の定量的評価を行うことが出来たことから、上記達成度と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
マルチセンサ薄膜を用いたモニタリングでは、外場によって変化する微小電流信号を適切に処理し、評価の信頼性を高めることが重要である。従って、MoDLC膜による疲労劣化診断を実現するために以下のことを検討する。 ・装置による製膜精度を検証し、製膜および特性の再現性を確認する。 ・高サイクル数における炭素の結合状態、機械的特性の変化を評価する。 ・電気抵抗変化を簡便かつ高精度に測定できる計測系を設計し、金属含有量や炭素の結合状態による感度の変化を詳細に評価する。 また、劣化と計測信号のパラメータ化を行い、電気的・機械的特性の変化と劣化過程の相関を明らかにし、データ抽出方法と外場の変化量の推定法の検討を行う。ここでは、センサの信号変化に基づいて材料の劣化やき裂などの経年変化あるいは変化の兆候を抽出するための劣化モデルを構築する。
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