研究課題/領域番号 |
23246045
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小寺 秀俊 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20252471)
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研究分担者 |
鷲津 正夫 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10201162)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マイクロデバイス / 細胞機能 / 細胞の初期化 / ヒトiPS細胞 / 弱い力場 |
研究実績の概要 |
マイクロオリフィスを用いた低電圧エレクトロポレーション法を基盤技術とする 細胞内への分子導入用デバイスを開発し、細胞膜挙動の解明と細胞の初期化を含めたiPS細胞研究 や創薬へのデバイス応用の実現を図ることを目的に、細胞膜挙動および膜を介した分子輸送について観察が可能なマイクロデバイスを開発した。そしてエレクトロポレーション時の電気泳動が分子輸送に及ぼす影響を検討するとともに、マイクロオリフィスをアレイ化したハイスループットの研究用デバイスを提案し、細胞内分子挙動と分子ローカライゼーションの研究を行ってきた。 また、マイクロチップ上での遺伝子等導入技術と,チップ上での高感度測定技術の組み合わせにより,体細胞のiPS 化・iPS 細胞の分化を,細胞非侵襲的に1細胞レベルで経時追跡することにより,その過程,特に細胞周期との関連を可視化解析するとともに,履歴が明らかな細胞ク ローンを得ることにより,移植医療用細胞製剤として,あるいは創薬のスタン ダードとしてのiPS 細胞の応用展開を加速する新手法を開発することを目的とし て行った。 その結果、Hela細胞およびTIG細胞を用いて,GFPプラスミドを導入したところ,い ずれにおいても1.5時間程度後から発現が見られることを確認した。次に,細胞 周期依存的な蛍光色を発する細胞(HeLa/Fucci細胞)を用いて,細胞周期と遺伝 子発現・初期化の関連について研究を行った。GFPプラスミドを用いての観察で は,Fucciが緑色のタイミング(S期からG2期)とFucciが赤色のタイミング(G1 期)の両者でほとんどが発現をし,Fucciが赤色のタイミング(G1期)での発現 は希であった。これは,タンパク合成の生じているG1で最も発現が生じやすいと いう直感とは異なる結果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
細胞への物質導入および細胞融合デバイスに関しての一連のデバイス構造の検討と細胞への実験は完了し、マイクロデバイスの有効性を明らかにすることができた。また、細胞へのマイクロデバイスを用いた継続的な刺激に対する細胞の応答に関しても膵β細胞に対して明らかにすることができ、細胞の機能発現に関してもマイクロオリフィスを用いた実験系の有効性を示すことができ、当初の目的を達成できた。 さらに、細胞のマイクロデバイス内での培養実験において、遅い流れ場および細胞と培養基盤との関係が細胞の機能発現に重要であり、その中で弱い力場が大きく影響していることを見いだした。すなわち、初期化され培養により従来の培地上ではコロニー状に増殖した細胞塊は、通常平面的な3次元形状を形成しているが、基盤との相互作用力をナノファイバーを用いて弱くした場合、細胞塊の形状が細胞の種類により異なる現象を発見し、1種類のように見えるコロニーがステージの異なる細胞から構成されている可能性を見いだし。マイクロデバイスによる実験系の可能性を見いだした。また、弱い力場を実現するマイクロメッシュをリソグラフィーにより作製し、その上でiPS細胞を培養することで、細胞の新たな分化誘導が可能なことも見いだした。
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今後の研究の推進方策 |
マイクロデバイスにより実現することが可能な、弱い力場がヒトIPS細胞コロニーを形成するステージが異なると考えられる細胞の分離が可能かどうか。また、分離した細胞がどのようなステージにあるのかを遺伝子解析はじめ細胞生物学の観点から詳しく調べるとともに、細胞へどのような力場が影響しているのかに関して、力場の制御方法を検討し考察する予定である。 また、分離した細胞がどのような分化能を有しているかも実験的に検証する必要がある。しかし、これらの、研究を推進するためには、最終年度であり平成27年度のみでは時間的に無理があり、最終年度であることから、基盤Sへ申請を行っっている。 細胞から臓器モデルの組織を作製し、創薬等へ応用するBody on a chipへの展開がマイクロデバイスの有効な利用および展開の方向であり、再生医療・創薬の分野で要求が高まってきている。研究成果の公表により多くの分野・研究者から共同研究の依頼もあり、これまで進めてきた研究を基礎研究のみならず応用研究へも展開することが必要になってきており、産学連携や異分野融合の研究へと技術移転することが重要と考え、その方向へ推進・展開も図る。
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