研究概要 |
本研究は「モータ/キャパシタ/ワイヤレスによる2030年のクルマ社会に関する研究」と題し,リチウムイオン電池一辺倒で進んでいる内外の電気自動車(EV)開発に警鐘を発し,「もう一つのクルマ社会」を提案し,そのための「モータ/キャパシタ/ワイヤレス」の要素技術開発を10程度にしぼり,3年計画でこれを追求するものである。 具体的には,「ワイヤレス」電力伝送によって電力インフラにクルマを接続し,「キャパシタ」にちよこちょこ充電ながら走る電車のようなクルマを開発する。そして,電気自動車の最大の利点である「モータ」の制御性の良さを活かした運動制御によって,安全性の向上とさらなる省エネルギーを実現する。 今年度の具体的な成果は以下の通りである。まず,1.電気モータの高い制御性を生かした運動制御技術は,(1)電気自動車の走行安全性を向上させる研究,(2)運転者にとっての操舵性・乗り心地を向上させる研究,(3)キャパシタ電気自動車の航続距離を延長させる研究に分類している。その成果の詳細を述べる紙面の余裕がないが,それぞれに項目において,所期の予定通り,実車による走行実験を含む大きな成果を上げることができた。また,柏キャンパス内に走行実験路を整備し,新しいガレージも完成した。来年度以降の研究計画にも大きな助けとなるため,一同意気盛んである。 また,2.電気自動車への電磁共鳴方式によるワイヤレス充電についても,本年度の目標とした,(1)最大効率追従制御システムに関する研究,(2)kHzアンテナの大電力かつ超小型化に関する研究において期待通りの成果をあげ,内外からも非常に注目されている。研究は順調に進んでいると言える。 さらに世の中への啓蒙活動も視野に入れているが,「モータ/キャパシタ/ワイヤレスによって描く未来のクルマ社会」にように題する招待講演を数多く行い,その目的を達成できたと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)当初の計画以上に進展している,と言ってもいいかもしれない。電気自動車の運動制御については藤本准教授の,またワイヤレス給電については居村助教の強力な指導のもと,優秀な大学院生が着々と成果をあげており,各種新聞などへの掲載,学生の表彰などもいくつもある。また,某電装メーカから「完全に負けている」というコメントまで出た。間違いなく,内外のから熱く注目されている。 また,柏キャンパスの公開(昨年10月)において,本研究の成果は研究科の目玉として取り上げられ,学内ニュースにも大きく掲載された。本研究は,平成22年度から科学技術戦略推進費「明るい低炭素社会の実現に向けた都市変革プログラム」内のモビリティグループ,柏ITS推進協議会の第2部会として,柏市とも連携した地域振興の取り組みの中でも重要な位置を占めている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度も研究実績に掲げた2項目(運動制御とワイヤレス給電)の5つの小テーマを継続,発展させていくが,後半のワイヤレス電力伝送に関しては,(3)インピーダンス変動を考慮したシステムに関する研究,(4)エアギャップと負荷の同時推定,(5)電磁共鳴式通信とセンサ利用,(6)漏洩電磁波低減技術の開発,といった項目を追加して追求する予定である。 とくにワイヤレス給電技術については,堀が委員長をつとめている,自動車技術会の「ワイヤレス給電技術部門委員会」にどんどん集まってくる専門家との議論を通じたテーマ設定,国総研との共同プロジェクト,NEXCO中日本における標識車への適用など,さまざまな意味でCenter Of Excellenceとして中核的立場にある。 より一層の自覚および感謝を忘れないようにしながら研究を進めていきたい。
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