研究課題/領域番号 |
23246049
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堀 洋一 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (50165578)
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研究分担者 |
藤本 博志 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (20313033)
居村 岳広 東京大学, 新領域創成科学研究科, 助教 (30596193)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 電気自動車 / 電気モータ / キャパシタ / ワイヤレス給電 / 電力インフラ / モーション制御 / エネルギー効率化 / インピーダンス整合 |
研究概要 |
本研究は「モータ/キャパシタ/ワイヤレスによる2030年のクルマ社会に関する研究」と題し,リチウムイオン電池一辺倒で進んでいる内外の電気自動車(EV)開発に警鐘を発し,「もう一つのクルマ社会」を提案し,そのための「モータ/キャパシタ/ワイヤレス」の要素技術開発を10程度にしぼり,3年計画でこれを追求するものである。 「ワイヤレス」電力伝送によって電力インフラにクルマを接続し,「キャパシタ」にちょこちょこ充電ながら走る電車のようなクルマを開発する。そして,電気自動車の最大の利点である「モータ」の制御性の良さを活かした運動制御によって,安全性の向上とさらなる省エネルギーを実現する。 まず,1.電気モータの高い制御性を生かした運動制御技術は,(1)電気自動車の走行安全性を向上させる研究,(2)運転者にとっての操舵性・乗り心地を向上させる研究,(3)キャパシタ電気自動車の航続距離を延長させる研究に分類している。その成果の詳細を述べる紙面の余裕がないが,それぞれに項目において,所期の予定通り,実車による走行実験を含む大きな成果を上げることができた。また,柏キャンパス内に走行実験路を整備し今年度に舗装もすべて完了した。新しいガレージも完成し,今後の研究計画に大きな助けとなるであろう。 また,2.電気自動車への電磁共鳴方式によるワイヤレス充電についても,(1)最大効率追従制御システムに関する研究,(2)kHzアンテナの大電力かつ超小型化に関する研究,に加えて,(3)インピーダンス変動を考慮した設計,(4)エアギャップと負荷の同時推定,においても大きな成果をあげた。 さらに世の中への啓蒙活動を視野に入れているが,「モータ/キャパシタ/ワイヤレスによって描く未来のクルマ社会」「100年後のクルマとエネルギー」などと題する招待講演や寄稿を数多く行い,その目的を達成できたと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画以上に進展している,と言ってもいいかもしれない。 電気自動車の運動制御については藤本准教授の,またワイヤレス給電については居村助教の強力かつ継続的な指導のもと,優秀な大学院生が着々と成果をあげており,多くの新聞などへの掲載,学生の表彰などもいくつもある。また,某電装メーカから「完全に負けている」というコメントまで出た。間違いなく,内外のから熱く注目されている。 また,柏キャンパスの公開(毎年10月)において,本研究の成果は研究科の目玉として取り上げられ,学内ニュースにも大きく掲載された。本研究は,平成22年度から科学技術戦略推進費「明るい低炭素社会の実現に向けた都市変革プログラム」内のモビリティグループ(堀がリーダー),柏ITS推進協議会の第2部会(堀が部会長)として,柏市とも連携した地域振興の取り組みの中でも重要な位置を占めている。 この研究で行っている「モータ/キャパシタ/ワイヤレス」によって未来のクルマ社会を描こうという提唱は,多くの賛同者を集めている。堀は,自動車技術会の技術担当理事をつとめているが,電気駆動関係の技術部門委員会(総計5つ)の体制を完成させ,その大会やフォーラムを多く計画,実行している。とくに,ワイヤレス給電シムテム技術部門委員会は巨大で,学会,産業界のみならず,経産省,国交省,総務省などからの委員も集めている。リチウムイオン電池一辺倒で進んでいる,誤った未来のクルマ社会構想に警鐘を鳴らすことにもかなり成功している。 本研究では,世の中への啓蒙活動を視野に入れており,マスコミ,新聞,民間誌などへの執筆,あるいは取材による被掲載記事,また,さまざまな機関での講演を多く行ったが,本報告書の研究成果には記載する必要はないとの指導があったため,すべて削除したことを申し添えておく。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度も研究実績に掲げた2項目(運動制御とワイヤレス給電)の5つの小テーマを継続,発展させていくが,後半のワイヤレス電力伝送に関しては,(1)最大効率追従制御システムに関する研究,(2)kHzアンテナの大電力かつ超小型化,に加えて,(3)インピーダンス変動を考慮したシステムに関する研究,(4)エアギャップと負荷の同時推定,とともに,(5)電磁共鳴式通信とセンサ利用,(6)漏洩電磁波低減技術の開発,といった項目にも重点を移して追求する予定である。 とくにワイヤレス給電技術については,堀が委員長をつとめている,自動車技術会の「ワイヤレス給電技術部門委員会」にどんどん集まってくる専門家との議論を通じたテーマ設定,国総研との共同プロジェクト,NEXCO中日本における標識車への適用など,さまざまな意味で Center Of Excellence として中核的立場にあるが,本研究の開始後,ますますその求心力は大きくなっていると感じる。 より一層の自覚を忘れず,および,科研費の補助によってそのベースが成り立っているということへの感謝を忘れないようにしながら研究を進めていきたい。 あえて問題点といえば,ワイヤレス給電技術が一種のブームになったことから,もうお金さえかければいつでも実現できるという誤った認識を世間一般の人々がもつのではないかという点である。大学などで行うべき基礎研究は,とくに,走行中給電を視野に入れた場合,まだまだ不十分である。将来にわたって,基礎的な研究をおろそかにしないように気をつけたいと考えている。
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