研究課題/領域番号 |
23246053
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
石山 敦士 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00130865)
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研究分担者 |
山川 宏 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00097263)
若尾 真治 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70257210)
王 旭東 早稲田大学, 理工学術院, 助手 (20550346)
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キーワード | 加速器 / 超伝導材料 / 電気機器工学 / 量子ビーム / 癌 |
研究概要 |
次世代の小型・高効率・高性能の重粒子線がん治療用超伝導加速器「先進ハイブリッド・サイクロトロン(AHC)の実現」を最終目標に、本研究では、高磁場を高い精度で発生可能な高温超伝導コイルシステムの開発を目指している。本年度(初年度)は、研究計画に沿って次の3項目を実施した。1)AHC用超伝導コイルシステムの試設計:放射線医学総合研究所の重粒子線がん治療装置HIMACと同等(炭素C6+を核子当たり400MeVまで加速。イオン電流密度:300nA)の加速器仕様のもとで、シミュレーテッド・アニーリング・アルゴリズム等を利用し、使用線材の超伝導特性(臨界電流-磁場特性)や機械特性などを制約条件として線材使用量を最小化する超伝導コイルシステムの設計最適化を行うとともに、目的とするコイルのコンパクト設計上最も厳しい制約となると予想される機械強度を見積るため、コイル巻線に働く電磁応力分布を有限要素法に基づく3次元数値解析により評価した。2)磁場精度に影響する要因の抽出:目的とする加速器用コイルには1/1000~1/10000の磁場精度が要求される。そこで、まずテープ状超伝導線材をパンケーキ状に巻線した場合の巻線誤差の許容値を数値解析により評価した。また、実際の巻線時の誤差をレーザー変位計により実測するシステムを構築し、発生誤差の評価を行った。さらに、超伝導線材に磁場が印加されたときに発生する遮蔽電流分布(発生磁場に影響を与える)を数値的に詳細解析(3次元電磁場解析)することのできる計算機プログラムを開発した。3)耐放射線特性評価実験:YBCO線材とBi-2223線材を対象として、中性子線照射前後の超伝導特性および機械特性(ひずみを加えた時の超伝導特性)の比較実験を行った。これまでのところ照射による劣化は観測されていない。また、放射線損傷の調査とともに超伝導線材の放射化分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度予定した数値解析に基づくコイルシステムの設計、巻線精度・線材内遮へい電流の発生磁場への影響評価、および耐放射線性に関する特性評価実験については予定通り進んだが、最も研究費の多くを計上したモデルコイルの作製が助成金の全額支給の可否に係わったため、コイル設計・発注・製作が遅れた。このため、モデルコイルおよび発生磁場精度測定装置(特注)の納品は完了したが、発生磁場精度評価実験までに至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
23年度に計画どおり行えなかった超伝導モデルパンケーキコイルによる発生磁場精度の評価実験を早急に実施し、加速器用として必要となる1/1000~1/10000の磁場精度を実現するための方策を確立する。その他については研究計画どおり推進していく。
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