研究課題
本研究の目的は、本質的に大きなスピン偏極率を有するハーフメタル材料のCo基ホイスラー合金と、高移動度半導体チャネル(Ge等)を融合する高品質エピタキシャルヘテロ構造の実現を通して、次世代半導体スピントロニクスデバイスの基盤を構築することである。平成23年度は、Ge基板上へのハーフメタルCo_2MnSi電極を用いたMTJのエピタキシャル成長を実証すると共に、強磁性CoFe電極/MgOバリア/n-Geトンネル接合におけるスピン輸送現象に関して、以下の知見を明らかにした。(1)GeチャネルFETと強磁性トンネル接合(MTJ)のモノリシック集積による不揮発、超低消費電力を特徴とする論理回路が有望である。このために、Ge(001)基板上に、MgOバッファ層を介した、CoFe下部電極/MgOバリア/CoFe上部電極の層構造からなるCoFe MTJのエピタキシャル成長を実証した。さらに、上部CoFe電極をハーフメタルCo_2MnSi電極に置き換えたCoFe下部電極/MgOバリア/CoFe極薄層(1。1 nm)/Co_2MnSi上部電極の層構造からなるCo_2MnSi MTJのエピタキシャル成長を実証した。また、MgOバッファ層(10 nm)上のCoFe MTJおよびCo_2MnSi MTJに対して、室温でそれぞれ218%および310%の高いTMR比を実証した。(2)Ge基板に対するPのイオン注入によりn型Geチャネル(チャネル厚み:100nm、電子濃度:2。7×10^<18>cm^<-3>)を形成し、このイオン注入基板を用いたエピタキシャルCoFe/MgOバリア/n-Geトンネル接合を作製した。さらに3端子配置デバイスにより、室温においてHanle型信号を観測すると共に、この信号の大きさがMgOトンネルバリアの厚みに対して、指数関数的依存性を示すことを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
Ge(001)基板上へのMgOバッファ層を介した。ハーフメタルCo_2MnSi電極を用いた強磁性トンネル接合(MTJ)のエピタキシャル成長と、室温での優れたMTJデバイス特性を実証した。さらに、イオン注入のnチャネルを有するGe基板上への強磁性CoFe電極/MgOトンネルバリア/n-Geトンネル構造のエピタキシャル成長を実現し、室温において3端子Hanle信号を観測すると共に、この信号の大きさがMgOトンネルバリアの厚みに対して、指数関数的依存性を示すことを明らかにした。
前年度(平成23年度)、既存の超高真空スパッタチャンバーにGe MBE成長チャンバーを増設した。今後はGe MBE成長の自由度を活用し、高濃度層の挿入を含めてGe層構造の最適化を図る。このGe層構造に対して、真空一貫成長により、ハーフメタルホイスラー合金Co_2MnSiとMgOトンネルバリアを用いた、高品質エピタキシャルCo_2MnSi/CoFe極薄層/MgOバリア/n-Geヘテロ構造を実現し、最も厳密なスピン注入の証明となる非局所4端子Hanle効果を室温において実証する。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (33件)
Journal of Electron Spectroscopy and Related Phenomena
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