研究課題/領域番号 |
23246056
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
吉川 明彦 千葉大学, 産学連携・知的財産機構, 特任教授 (20016603)
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研究分担者 |
草部 一秀 千葉大学, 産学連携・知的財産機構, 特任准教授 (40339106)
糸井 貴臣 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50333670)
石谷 善博 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60291481)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 薄膜・量子構造 / 窒化物半導体 / 太陽電池 |
研究概要 |
本研究の目的は、窒化物半導体超薄膜“1分子層”InNの極めて高い構造完全性を活用した光素子創製の基盤科学技術開拓である。平成25年度は、「InN/GaN=1分子層/4分子層」擬似混晶のMOVPEプロセス開拓と、これを光吸収層とした太陽電池の作製に注力し、下記成果を得た。 1. 「InN/GaN=1分子層/4分子層」擬似混晶のMOVPEプロセス開拓・構造精密制御:当グループの独自技術である1分子層InN高温成長・非平衡動的プロセスを、先行するMBEからMOVPEに展開し、太陽電池光吸収層に適用できる「実効In組成10 %以上、膜厚200 nm以上」の擬似混晶InGaN成長プロセス開拓に取り組んだ。分光エリプソメトリin-situ観察により成長表面を1分子層レベルで精密に制御し、InGaN擬似混晶の実効In組成を3-6 %から10.5 %まで増大できた。 2. 擬似混晶InGaN光吸収層/pn-GaN太陽電池の波長感度評価:窒化物半導体太陽電池の波長感度特性から、光励起キャリアの輸送特性を評価した。InGaN擬似混晶の厚膜化(266 nm)と実効In組成増大(10.5 %)により、波長420~440 nm帯まで応答波長域が拡大された。また、受光面側のp-GaN層厚・ドープ密度の最適化によってキャリア輸送効率が向上され、短絡電流密度Jsc > 1 mA/cm2が得られるようになった。 3. MBE・MOVPE成長した窒化物半導体太陽電池の接合特性改善:成長表面の精密制御が特徴である1分子層形成技術を基板表面処理・界面制御に適用することで、太陽電池の接合特性が改善されることを実証した。MBEでは、接合リーク抵抗が2.6 k・Ωcm2 → 59 k・Ωcm2に1桁高抵抗化された。MOVPEでは、大幅に接合リーク抵抗が改善され、156 k・Ωcm2 → 20 M・Ωcm2以上となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度当初に立案した研究計画に沿ってバランス良く進捗が見られている。さらに、デバイス作製を通じた総合的な検討が進み、特に、素子構造およびデバイス作製全プロセス向上の最適化によって窒化物太陽電池の各特性がトップレベルまで到達している。また、1分子層形成技術のエッセンスを、基板表面・デバイス界面制御に持ち込む新たな展開を示すことができている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は本研究課題の最終年度になるため、太陽電池性能の目標値を大胆に向上させ「実効In組成20 % InGaN擬似混晶」を含むセルで「AM-1.5/集光での変換効率 = 5 %」に挑戦する。これを実現するために「窒化物半導体超薄膜“1分子層”技術」を拡張した新規提案を含む下記の研究実施計画を設定する。 1. 実効In組成増大化に向けたInN/GaN/AlNデジタルエピタキシ・格子歪/分極制御擬似混晶:太陽電池応答波長域の長波長化(λ~475 nm)に向け、光吸収層の実効In組成増大に必須な低温成長プロセス開拓に取り組む。また、分極効果抑制のための格子歪制御AlN挿入まで視野を広げる。 2. 1分子層技術による接合リーク源の終端・不活性化の検討:これまで有効な打開策が見いだせなかった窒化物太陽電池の接合リーク電流の飛躍的低減・抑制のために、接合近傍に形成される電流リーク源を終端・不活性化させる新規プロセスを検討する。 3. “1分子層”量子井戸構造研究の最終年度総括:これまでの研究成果の補完など、広い視野に基づいて本研究課題を総括し、今後の展望をまとめる。
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