研究概要 |
生体内伝導通信として,マウス脳を信号伝達媒質として利用し,センサから脳表に配置された受信機間において,無線通信を行うことを提案し基本実験を行った.Pt電極を用いてマウス脳内の信号伝達特性を計測・評価し,その結果をもとにイメージセンサの画像信号をAM送信した.なお動物実験は奈良先端科学技術大学院大学ガイドラインに沿って行った.摘出した成体マウス脳の信号入力と伝達特性の計測を行った結果,測定した周波数範囲(10MHz-3GHz)において電極をマウス脳に挿入することにより,信号の伝達特性が向上していることがわかった.特に30-70MHzにおいては,20dB以上の改善が得られており,マウス脳内の無線伝送は,空気中と比べて低い出力で実現できることが示唆される.次に画像伝送実験を行った.本実験では,センサをマウス脳の外部配置し,撮像したテスト画像の信号を伝送した.イメージセンサは我々が試作したチップサイズ550μm×700μmの微小CMOSイメージセンサを用いた.画素サイズは7.5μm角,画素数は60×60である.センサからの画像信号出力は信号発生器へ入力し,AM変調信号を生成した.搬送波周波数は前述の摘出脳を用いた実験の結果から50MHzとした.前述の実験同様Pt線を用いてマウス脳へと信号を入力し,透過した信号を取得した後,復調して画像生成を行った.生成された画像を図5に示す.信号強度はそれぞれ10dBmおよび-20dBmである.-20dBmにおいても,雑音は増加するが画像の伝送に成功しており,低電力でのマウス脳内の無線伝送が可能であることが示された.本実験では,アナログAM変調を用いたが,伝送方式の最適化により雑音の低減も可能と考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,複数のu-COM駆動及びその画像取得・合成に関する研究を開始する.具体的には,(1)u-COM設計・試作・動作検証,(2)生体内伝導通信,(3)2次元通信,(4)in vivo実証 について研究を進めていく.
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