研究概要 |
電気自動車において基幹部材として用いられるモータは,軟磁性材料と永久磁石材料との組み合わせから成り立っており,各々の磁性材料の特性向上が必須である.これらの磁性材料の開発の際には,磁性材料の磁化状態とモータとしての最終形態での固定子-回転子間の漏洩磁界および磁界勾配等の静的・動的特性との相関を把握することが必須であるが,現状これを可能とする分析システムは見あたらず開発が加速できていなかった。すなわち,モータ等の巻き磁芯形態の試料に対し,非接触で磁化状態や漏洩磁界分布を評価できる分析システムの開発が渇望されていた.本研究では,低損失軟磁性材料ならびに少・脱希土類永久磁石材料の迅速な開発を行うため,「磁性材料からの漏洩磁界の空間分布を可視化する技術」と「局所領域の磁気光学効果スペクトルを短時間で分光検出する技術」を確立し,多機能分析磁気光学評価システムを構築することを目的とする. 平成23年度は,表面プラズモン共鳴角付近(SPR)における磁気光学効果が磁界強度に敏感であるという知見を磁界検出に積極的に適用し,センサーイメージングデバイスの構築を目指した.その結果,Au単層膜の反射率と磁界掃引時の履歴曲線の傾きの入射角依存性が,SPRにおいて,楕円率・回転角の磁界線型応答成分(傾き)の,回転角はベル型(最小値:-0.53度/kOe),楕円率は分散型(最大・最小値は0.23度/kOe,-0.31度/kOe)の共鳴構造をとることを見出した.これはAu薄膜の基体となるガラスによる極僅かな磁気光学効果がAu膜によるSPRにより増強されることに依る.次にクレッチマン配置によるSP検出光学系を構築し,試料走査型で漏洩磁界の空間分布のマッピングを試みた結果,mm寸法の空間分布を有する永久磁石からの漏洩磁界分布のマッピングに成功した.局在プラズモン系でも同様の効果を確認した.さらに巻き磁芯形態試料からの磁気光学効果の一括検出光学系の構築に関しても目処がたった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プラズモン共鳴による磁気光学効果の増強現象の原理検証と,それを活用したイメージングに関しては,当初予定通り成果が得られた.空間分解能の検証には,μm領域の静的磁界分布を有する試料が必要であるため,これを作製して評価に供したい.
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に成果が得られた空間磁界マッピングについては,即領域の静的磁界分布を有する試料を種々評価することにより,磁界強度の定量性や方向成分の検出を追求していきたい.動的な磁界変化挙動に関しても一括撮像方との組合せができれば,ストロボスコピックな手法や揺動部分のイメージング法により可視化可能であるため,これまで確立してきた磁区観察技術の適用が期待できる.
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