研究課題/領域番号 |
23246103
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
田邉 新一 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (30188362)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2015-03-31
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キーワード | 建築環境・設備 / 感染症 / リスク / 医療福祉施設 |
研究概要 |
医療福祉施設における新型インフルエンザ、結核、麻疹などの感染症リスクが現代社会で問題となっている。適切な感染症制御のためには、医学的側面だけではなく建築環境・設備的な側面からもリスク低減策を考える必要がある。本研究では、感染症リスク低減効果の評価手法の構築及びそれらの知見を基盤として次世代型病院建築・設備システムの提案を行うことを目的とする。平成24年度は以下の項目に関して研究を行った。 1) 空気・飛沫感染を引き起こす感染性微粒子の挙動予測と建築的予防策の創案:飛沫粒子の粒径分布や室内挙動をシミュレートし、従来の感染予防策の再評価を行う。また室内空調の気流制御による低エネルギーで高効率な新しい混合換気システムなど、感染拡大しにくい病院建築換気システムを考案した。 2) 透析室における患者の症状を考慮した室内環境水準の提案:平成23年度に得られた申告結果を用いて糖尿病の進行状況、神経障害の進行程度等によって病状をグループ化し、グループ間で快適性の違いがあるか検討を行った。快適な室内温熱環境水準を提案した。 3) 咳気流の数値流体解析:飛沫粒子の蒸発に関しては実験的な性状把握が困難なため、数値流体解析(CFD)を用いて検討を行った。蒸発を再現することが可能になった。人体の発熱を考慮するために体温調節モデル(JOS)と連成した。 4) 模擬咳気流発生装置を用いた空気感染リスク評価:空気感染対策のために気流制御を行うプッシュプル装置の効果を明らかにした。特に気流方向、風量が医療従事者の感染リスク低減に与える影響を実験的に検証した。放射空調方式による感染原因物質の濃度低減効果に関しても検討した。効果的な清掃・除菌方法の検証:飛沫の付着部位に関して、実験的に確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本建築学会、空気調和・衛生工学会において研究発表を行うなど順調に研究が進んでいる。析室の快適性に関する実態調査に関しては、2年間に及び測定が終了した。査読論文化を進めている。模擬咳気流発生装置の開発に関しては、エアブラシを改良した装置を作成した。しかし、実際の咳流量と合わせるためにはさらに改良が必要である。今年度は完成防止ベッドの開発に注力した。プッシュプル型の装置を開発した。研究協力者の順天堂大学において、実測を行っている。今回の研究で得られた知見は実際の医療現場に応用が可能になっている。今年度中に予定していた査読論文の提出がまだとなっているため、(2)おおむね順調に進展しているという評価とした。順調に研究計画は進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
成果を取り纏める年度に近づいてきたため、査読論文の提出を精力的に行う予定である。個別の研究に関しては、以下のように進める予定である。空気・飛沫感染を引き起こす感染性微粒子の挙動予測と建築的予防策の創案:飛沫粒子の粒径分布や室内挙 動をシミュレートし、従来の感染予防策の再評価を行う。また室内空調の気流制御による低エネルギーで高効率な新しい混合換気システムなど、感染拡大しにくい病院建築に関して検討を行う。特にこれまで優れているいわれている病室の建築、空調的データを蓄積する。病院内の温熱環境実測として行われた透析室の測定結果を査読論文にする。快適性を考慮した病室計画:入院患者のストレスを軽減したモデル病室を計画する。モーションキャプチャーによる病室内動作解析:病室内における医療従事者や患者の動作範囲や特徴を明確にする。特に飛沫との接触による感染に関して注目する。これまでの分析には時間がかかっていたためこれを効率化する。ベッド間隔や什器配置について条件を設定し、解析を行う。咳の数値流体解析に関してさらに進める。特に病室形状、空調システムとの関係を考究する。模擬咳発生装置を用いた感染リスク評価をさらに進める。室内のベッド配置、ベッド間のパーティション配置、空調方式による感染リスク低減に与える影響を検証する。飛沫の付着部位、また医療従事者や患者が接触しやすい室内表面位置に関して、実験的に確認する。
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