研究概要 |
本研究では、創発化学により従来のプロセスでは実現不能なスピン・分極空間を創成し、これまでの酸化物合成プロセスでは決して手に入れることができなかった、実質的に極めて大きな負の圧力条件に相当する場を作り出す真空プロセス(PLD法)により、ペロブスカイト型酸化物を中心とする複合酸化物を合成して系統的に評価することにより酸化物科学の新しいパラダイムを構築することを目的とする。本年度はPLD法でBaTiO_3, SrTiO_3, MgTiO_3, MnSnO_3, ZnSnO_3, CaIrO_3, FeTiO_3等の薄膜を合成した。その結果、BaTiO_3では数%体積膨張した薄膜の強誘電性確認し、本系では鴛が700K程度まで上昇し、これが従来報告されている基板との整合歪みのみならず別の原因で処が上昇すること、鶏以上の常誘電相でも大きな正方晶歪みが残存し、これが塁の上昇と関連あることが推定された。この格子歪みの原因は今のところ不明であり引き続き調査予定である。また、誘電特性、磁気特性を測定することによりMnSnO_3, ZnSnO_3, FeTiO_3薄膜はLiNbO_3型強誘電体薄膜であることが確認され、通常の固相反応法では得られない準安定相の合成が可能であることを確認した。蛍光体の新物質探索の戦略として、層状酸化物の1つであるK2NiF_4型酸化物を選択し、より高性能な赤色蛍光体の合成を試みた。LaCaAlO_4のAlを3価のEuイオンで置換した固溶体を合成したところ、本系はいわゆる濃度消光が起こりにくく、Euを高濃度で置換できることを確認し、新しい物質合成の指針を得た。また、本物質の薄膜化にも成功し、赤色純度も従来物質よりも良好であることを確認した。また、PLD法による薄膜作製の新しい利用法として、還元反応場による、新しい原子価、結晶構造の制御が可能であることを確認し、鉄酸化物の強還元相を実現することに成功した。これは薄膜作製では従来、原子配列のみを利用した1種のテンプレートとしての利用ばかりでなく反応場としての利用も可能であることを確認するものであり、次年度以降も引き続き方針を修正しながら研究を推進する予定である
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