研究課題/領域番号 |
23246117
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
蔡 安邦 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (90225681)
|
研究分担者 |
西村 睦 独立行政法人物質・材料研究機構, 環境・エネルギー材料部門 水素利用材料ユニット, ユニット長 (20344434)
亀岡 聡 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (60312823)
藤田 伸尚 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (70431468)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 金属間化合物 / リーチング / 酸化物 / 還元 / ナノ組織 |
研究概要 |
2012年度において、新たな組織制御手法の開拓とこれまでに高い触媒性能を示す組織の起源の解明との両輪で展開してきた。以下に項目ごとにまとめる。 (1) Cu-Ag-Ce系合金を液体急冷法で作製した前駆体に熱処理を施すことにより、Cu/Agのナノ複合組織を得ることを目的としている。その前段階として、非晶質相が形成する組成範囲をある程度確認した。(2) Al-Pt-Fe3元合金系においてもAl2Fe/Al2Pt擬2元共晶組織が観測され、Al-Au-Fe系同様にCO 酸化反応に高い活性を示した。興味深いことに、共晶組成からかなりずれた組成の合金にも高い触媒活性を示した。Pt-Fe同士が固溶する関係にあることと関連すると考えられ、2013年度に更に詳細な調査が必要となる。(3)リーチを施したCu3Auで得たAuポーラスを断面電子顕微鏡写真で観測した結果、ポーラスのごく最表面に相対的に高いCuが固溶しており、高い触媒活性に寄与する可能性がある。また、中心から表面に向かって、Cu濃度が高くなることも確認されている。リーチングの段階において、格子欠陥とCu原子の拡散がポーラスの形成にも寄与すると推測される。CuがAuポーラスの表面に固溶している故に高い触媒活性を示すと推測される。(4)Al-Au-Fe系の共晶組織はAl5Fe2/Al2Ptの2相から構成されることが新たに明らかになった。さらに両相には一定な方位関係存在することも確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在のところ、ほぼ予定通りの展開で進んでいる。唯一予定より遅れをとっているのは、Cu-Ag-Ce系非晶質合金とナノ結晶組織の創製である。主な原因は、液体急冷装置の真空状態が悪いことにある。この点について、すでに改善ずみであり、今年度中に実際に組織と触媒特性の関係が明らかになる見込みである。一方、Al-Pt-Fe系の共晶合金においても、CO酸化反応に高い活性を示したほか、微量のPtが含まれるAl-Fe合金にも極めて高い活性が現れることは予想外の展開である。他方、Auポーラスの高い触媒の起源について、Cuが固溶することで、来年度までに実験と理論の両方のアプローチでひずみという観点から解明されるのであろう。全般的に順調に研究が進んでおり、一部の予想外に結果は今後新しい研究シーズとして発展されると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策として概ねは研究計画通りに進めるが一部の追加が必要となる。Cu-Ag-Ce系において、思ったより非晶質の形成能が低く、試料の作製に少しCe濃度の高い組成にシフト必要がある。また、Al-Pt-Fe系において微量のPtが含まれるにも関わらず、高い触媒活性を示したことを受けて、PtやAu等の微量固溶した組織を触媒調製の前駆体として働くことを想定する必要がある。これをヒントに準結晶を含めてAl-遷移金属化合物に微量の貴金属を固溶させたものを前駆体としてリーチング処理することで、従来の化学手法に比べて断然に簡単な方法で高活性の触媒を作製できる。同様なノーハウで金属化合物をターゲットに酸化処理で、高い触媒活性出現の有無も検討する予定である。
|