研究課題/領域番号 |
23246118
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
増本 博 東北大学, 学際科学国際高等研究センター, 教授 (50209459)
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研究分担者 |
横井 敦史 公益財団法人電磁材料研究所, 電磁気材料グループ, 研究員 (60513760)
小林 伸聖 公益財団法人電磁材料研究所, 電磁気材料グループ, 主席研究員 (70205475)
牧野 彰宏 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (30315642)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ナノ複相構造 / 複機能融合物性 / 磁性体 / 誘電体 / 薄膜 |
研究概要 |
本研究は、ナノ複相構造化により優れた高周波軟磁気特性を示す材料を得ることを目的としている。今年度は、まず、磁気異方性エネルギーの大きなCo70Pd30と、誘電率の大きなSrTiO3ターゲットを用いて、複合機能性を有するナノ複相CoPd/SrTiO3膜の合成を試みた。当初の計画通り、両物質の成膜条件を系統的に検討した結果、ナノ複相構造を有するCoPd/SrTiO3膜を得ることが出来た。膜はSrTiO3が約10%から40%の組成範囲で軟磁性を示した。特に、Co62Pd25(SrTiO3)13膜は11.6 kGの磁化、730 Oeの異方性磁界そして560μΩcmの電気比抵抗ρを有した。高周波特性を検討した結果、膜の透磁率μは20、その強磁性共鳴周波数,fr,は8 GHzと高いことがわかった。この膜の耐熱性を調べるために、一軸磁気異方性,Ku, の熱処理温度変化を調べた結果、Kuは300℃までほとんど変化しないことがわかった。すなわち、本研究で作製したナノ複相CoPd/SrTiO3膜は、高い耐熱性を備えた高周波軟磁気材料として、実用上極めて有益であると言える。 次に、大きな磁気―インピーダンス効果を示す材料を得ることを目的に、Coおよび高ρを有するCo-TiO2と大きな誘電特性を示すBi4Ti3O12からなる積層膜をタンデムスパッタ法で作製し、特性を検討した。得られたCo/Bi4Ti3O12とCoTiO2/Bi4Ti3O12積層膜共、優れた高周波軟磁気特性を示し、そのμとfrはそれぞれ70、30そして2.45、3.67GHzであった。本膜は、室温で膜の誘電率を外部磁場で、一方μを外部電界でかなり制御可能であること、すなわち、磁気―インピーダンス効果を示すことを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度研究の遂行を遅らせた東日本大震災の影響も、今年度はほぼ無くなった。本予算により購入した新スパッタ成膜装置は、不具合な部分の最終調整と操作法の習得を完了し、稼働中である。得られた膜の特性は、「研究実績の概要」の通り、思った以上の高周波特性と耐熱性を兼ね備えたものであった。今後の細部の調整や、新しい組成系の膜作製により、さらなる特性向上が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
「積層成膜自己拡散法」と「積層成膜in-sit拡散法」の2つの結晶化方式の両方を用いて研究を行ってきた。目的とするナノ複相構造薄膜を得るためには、「積層成膜in-sit拡散法」の効果がより期待できるため、「積層成膜in-sit拡散法」による成膜に比重を置いていくことになる。磁気特性と誘電特性の評価を精力的に進めることにより、磁気と誘電の両方の特性を兼ね備えた材料開発をめざしていく。さらに、同時並行的に、膜のデバイス化への試みを進めていき、研究を総括する予定である。
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