研究課題/領域番号 |
23246121
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
三浦 清貴 京都大学, 工学研究科, 教授 (60418762)
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研究分担者 |
下間 靖彦 京都大学, 工学研究科, 准教授 (40378807)
坂倉 政明 学際融合教育研究推進センター, 特定専門業務職員 (90402958)
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キーワード | アモルファス / ガラス / フェムト秒レーザー / 元素分布 |
研究概要 |
元素拡散傾向を、ガラス構成成分が異なる種々のガラス材料と超短パルスレーザー照射条件との組み合わせにより系統的に調べた。その結果、シリケートガラスにおいてはガラス骨格を形成する網目形成酸化物がレーザー照射領域の中心に集まり、その周囲に中間酸化物、修飾酸化物の順で元素分布が形成されることを確認した。また、リン酸塩ガラスやホウ酸塩ガラスにおいては、網目形成酸化物と中間酸化物との分布が逆転する現象が起こることも明らかになった。そこで、拡散シミュレーションよる実験結果の再現を試み、元素拡散の駆動力の特定とそのメカニズムの解明を行った。当初、駆動力として、超短パルスレーザーの集光照射により形成される急峻な温度勾配、衝撃波の伝搬、圧力分布や超急冷等いくつかの要因を考慮したが、結果として急峻な温度勾配が元素分布の形成を支配していることを確認した。具体的には、濃度勾配と温度勾配によるイオンの拡散のみを支配要因と仮定し、相互熱拡散二成分の系について拡散方程式に基づくシミュレーションを行った。拡散種はSiO2とCaOを仮定した。温度勾配を駆動力とした拡散は、濃度勾配を駆動力とした拡散と同時に起こり、シミュレーションに使用した温度分布と拡散後のCa濃度のシミュレーション結果およびSi濃度のシミュレーション結果が、実験結果を非常に良く再現できることが確認できた。さらに、多点同時照射により形成される元素分布状態を再現することにも成功し、形状制御が可能であることも確認した。以上、フェムト秒レーザー照射時の元素移動現象の駆動力が温度勾配であることを明らかにするとともに、多点同時照射による元素分布の形成制御の可能性を見極めた。これらの結果は,今後LCOS-SLMを利用し、ガラス内部にレーザーを多点で同時照射することで、任意の元素分布を形成するために必要な基礎データである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
元素拡散(分布形成)傾向を、ガラス構成成分が異なる種々のガラス材料と超短パルスレーザー照射条件との組み合わせにより系統的に調べ、拡散シミュレーションより元素拡散の駆動力を特定することで、そのメカニズムを明らかにすることができ、研究計画に沿った成果が得られているため。
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今後の研究の推進方策 |
元素拡散の支配要因である温度勾配を制御することを目的に、ホログラフィックレーザー集光照射システムを元素拡散制御に適したシステムとして再構築する。一般的なフェムト秒レーザー集光照射によるガラス材料内部の構造改質は、レーザービームをガラス内部の一点に集光し、試料を三次元ステージで動かすことによって各種構造改質を行っているが、LCOS-SLMとフェムト秒レーザーとを組み合わせることで、1つのビームを任意の強度分布を有する複数のビームに分割する二次元同時照射や、二次元のホログラムにフレネルレンズのパターンを組み込むことで三次元での同時照射を可能とする。また、繰り返し周波数の異なる(熱蓄積効果が異なる)フェムト秒レーザーを任意のパターンで複数同時集光照射することで、元素の拡散量、速度や方向の制御を試みる。
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