研究課題/領域番号 |
23246125
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
須賀 唯知 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40175401)
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研究分担者 |
島津 武仁 東北大学, 国際高等研究教育機構学際科学フロンティア研究所, 教授 (50206182)
日暮 栄治 東京大学, 先端科学技術研究センター, 准教授 (60372405)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 接合 / 実装 / 集積化 / 常温接合 / 表面活性化 |
研究概要 |
前年度に、今後の著しい進展の見込みが得られるとの見通しが明確になったSi-Si系、SiC系、新たな 展開が見込まれるPolymer-ガラス系を新たに対象材料として加え、常温大気中接合の可能性をナノ 密着層の組み合わせにより検証した。また、小径対応常温大気中接合装置の試作を行い、シーケンシャルプ ロセスのパラメータ影響の検討、プロセスパラメータの最適化等を行った。 基礎的な知見としては、酸化物生成自由エネルギーが正であるAu膜をナノ密着層(原子拡散接合)に用いて,水晶ウエハの大気中接合を行な い、接合に用いるAu膜厚と大気暴露時間等が接合に与える影響を検討した。その結果、大気にAu膜を取り出した後で168時間が経過した後に接合した場合でも、Au/Au界面では室温で再結晶が生じ、ウエハを強固に接合できることが明らかとなった。この 実験を通して、新しい接合プロセスの接合メカニズムと信頼性に関する基礎的な知見を得ことができた。 フォトニクス関連の応用デバイスとしては、Si/Geヘテロ接合用いたフォトニクスデバイスを実現するために、p型Geウェハとn+型Siウェハに対し、Ar高速原子ビームによる表面活性化接合を行い、ダイシェア試験によりバルクから破断する程度の強い接合強度とI-V特性測定により低抵抗なオーミックコンタクトが得られることを明らかにした。また、半導体レーザなどの光素子の低温接合技術を実現するために、大気圧プラズマを用いたAu-Au表面化接合技術(大気雰囲気)を開発した。コイニングにより平滑(Ra: 3.0 nm 以下)で厚い(10 μm以上)Auバンプを形成し、Ar+H2 大気圧プラズマや N2 大気圧プラズマにより活性化を行うことで、低温(常温~150℃)で光応用に十分な接合強度(MIL-STD-883の基準値以上)が得られることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、我が国が先行する常温接合において、世界に先駆けて実用化・量産化に結びつけていくための新しい視点として 、超高真空によらない大気中常温接合を実現することを目的としている。そのために、従来の常温接合の基盤技術を 体系化し、Ar イオン衝撃を主体にした表面活性化+金属やSi の数原子層極薄膜形成プロセス+水プラズマ照射 というシーケンシャルな複合プロセスを提案し、MEMS パッケージ、次世代タイプCu バンプレス・インターコネ クト、フォトニクスデイバス開発を通じてその可能性を検証することになっている。 この目的に沿って、Ar-FABやSiナノ密着層(原子拡散接合)などが提案され、また、酸化、酸化物生成自由エネルギーの大小が接合に寄与しているという理論的な裏づけ、また膜厚と大気暴露時間との関係が明らかにされている。また、水プラズマ照射については装置の関係から直接の実施は見送ったが、これと同等の効果があると思われる大気圧プラズマの導入を行い、常温大気中接合の可能性が明らかにされ、また、MEMS パッケージフォトニクスデイバス開発を行っており、順調に進展しているといえる。 なお、さらに、平成24年12月、当初予定していなかったSi-Feナノ密着層を適用することで、Polymer-ガラス・Polymer系の常温接合が可能となった。この新しい知見を有効に生かすために、新たに6カ月を要して新規に装置設計を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年12月、研究遂行の過程で、その成果として当初予定していなかったSi-Feナノ密着層を適用することで、Polymer-ガ ラス・Polymer系の常温接合が、新しいイオンソースを用いて可能となった。これは今後のデバイス開発にとっ て新しい発明であり、H24年度、試作予定であった小径対応常温大気中接合装置の改良によって、当初の研究目的の達成が進 むとともに、さらに新しい材料へ小径のみならず大口径・大面積に対しても適用可能であるという点で有効に展開できる見込みとなった。その結果、この新しい知見を有効に生かすために、装置改良・試作を新たに6ヶ月を要して、この効果をSiCの接合においてH25年度に検証することとなった。
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