研究概要 |
親水性を示す官能基は反応性が高く、長時間親水性を維持するのが困難であるため、熱力学的にも安定な親水性官能基表面を作製するために、高分子電解質ブラシ表面の作製方法の確立を行った。高分子電解質ブラシは、陽イオンあるいは陰イオンが基板表面上に固定されており、カウンターイオンが一定の自由度を持っている。表面近傍において、電気的中性が大きく崩れることは熱力学的に不安定であるため、陽イオンの運動は表面近傍に束縛されることになる。結果として、表面近傍に束縛された束縛水層を運動する、あるいは、逆説的には、運動する領域が束縛水層となる。本研究では、従来合成してきた高分子電解質ブラシ(-SO_3H,-SO_3Na)に加えて、(-COOH,-(SO_3)_2Ca,-SO_3K,-COONa,-(COO))_2Ca,-NH_4CL,-(NH_4)Br,等の新規な高分子電解質ブラシの作製を試みた。アニオン重合によって得られた高分子をシランカップリング剤で末端終端した。それらの分子量をGPCによって測定した。また各種官能基を付与するための反応プロセスについて検討を行い合成プロセスの確立を進めた。また官能基を付与したポリマーブラシの同定をPy-GC/MS等を用いて同定した。また、高分子ブラシ表面の水の状態について赤外吸収分光分析によって測定を行った。赤外吸収分光分析によって得られたデータから、高分子ブラシ表面に束縛された束縛水は自由水とは異なるスペクトル位置にスペクトルが現れることが分かった。これらのスペクトルをメソポーラスシリカ等、水と強く吸着する物質と比較し評価した。
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