固体高分子形燃料電池等への応用を目指したイオン伝導性材料を開発することを目的として、高分子電解質ポリマーやメソポーラスシリカ内の特異な水環境に関する研究を進めてきた。高分子電解質やメソポーラスシリカでは、高分子中のイオンやメソポーラス内壁からのポテンシャルによってメソポーラスシリカ内の水は特異な振る舞いを行うことが知られている。これまでに、各種高分子電解質の重合を行い、高分子電解質に束縛された水のふるまいや、メソポーラスシリカ内の水の挙動について赤外分光分析を用いて行ってきた。また、これらの水の状態を制御するために、プラズマを用いた官能基の修飾等について検討を行ってきた。しかし、メソポーラスシリカ内への官能基修飾を行うにあたって、メソポーラスシリカ内の水のふるまいが官能基の修飾に影響する可能性がある。そこで、本年度は、メソポーラスシリカの水の挙動について、さらに詳細に解析すると共に、メソポーラスシリカ内への表面修飾手法について検討を行った。その結果、水は細孔壁近傍に吸着水層を成し、続いてシリンダ状細孔に対する毛管凝縮が生じ、細孔中心部でも水吸着を生じることが明らかとなった。また、シリカ壁の成す2 nmを下回る極狭空間が、水のネットワーク形成を阻害することを示し、メソポーラスシリカ内の水の挙動が明らかとなった。したがって、本研究によって、壁面や官能基の極近傍の水の挙動の理解が深まるとともに、水を制御するための指針を得た。イオン伝導は水の状態にも強く影響を受けると考えられており、本研究によりイオン伝導性材料を開発する上で意義のある結果を得た。
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