研究課題/領域番号 |
23246128
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤本 愼司 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70199371)
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研究分担者 |
土谷 博昭 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50432513)
宮部 さやか 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50584132)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ナノポーラス / 自己組織化 / 生体材料 / 生体適合性 / 腐食防食 |
研究概要 |
本年度は、生体用金属材料であるSUS316Lステンレス鋼表面に電気化学的手法を用いて様々なサイズの細孔を有する自己組織化ナノホールアレイを形成し、その生体適合性評価を静的環境下ならびに動的環境下で行った。 静的環境下での評価では、ステンレス鋼表面にナノホールアレイを形成することにより、機械研磨を行ったのみの平滑な表面と比較して、細胞増殖は促進され、ナノホール径が小さい場合に促進効果が高いことが分かった。細胞接着がナノホールの縁であったことから、ナノホール径が小さくなることによりナノホールの縁部分の面積が増加し細胞接着の箇所が増えたことが細胞増殖に関連していると考察した。ステンレス鋼表面に形成したナノホールアレイは細胞の形態にも影響を及ぼし、ナノホールアレイ上では細胞は仮足がより多く、より伸展した形態となることが分かった。さらにステンレス鋼表面にナノホールを形成することによりALP活性が向上することが分かった。一方、動的環境では動的ひずみ付与によるステンレス鋼表面に形成した酸化物皮膜の破壊及びその再生挙動を電気化学的手法により調査し、平滑な表面を有するステンレス鋼と比べ、ナノホールアレイを表面に形成したステンレス鋼では動的ひずみが付与された際に起こる酸化物皮膜の破壊に伴うステンレス鋼の溶解を減少させ、また酸化皮膜の再生速度もナノホールアレイを形成した方が著しく速くなった。 以上の結果より、電気化学的手法により表面にナノホールアレイを形成することで、ステンレス鋼の生体適合性を向上させるだけでなく動的環境下における耐食性も向上させうることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は様々なサイズのナノホールアレイを表面に形成した生体用金属材料の生体適合性を静的環境下及び動的環境下で評価することを目的として研究を実施した。その結果、静的環境下においてはステンレス鋼表面に形成したナノホールが細胞活性、細胞伸展に影響を及ぼすこと、ナノホール表面上での細胞接着箇所を明らかにした。また動的環境では単発ひずみ付与によりナノホール表面に形成する酸化物層が破壊された際のステンレス鋼の溶解・再不働態化挙動を明らかにするなど、計画した項目はほぼ実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は表面に様々なサイズのナノホールアレイを形成した生体用金属材料の動的環境下での生体適合性評価と表面酸化物層の構造・組成調査を行うとともに、ナノホール表面への薬剤の固定とその徐放挙動について調査する。具体的には繰り返し動的ひずみを付加することにより生体用金属材料の疲労特性に及ぼすナノホールアレイの影響、動的ひずみの繰り返し負荷によりナノホール表面に形成する酸化物層が破壊と再生を繰り返した際の酸化物層の構造・組成変化を評価する。またナノホールへのモデル薬剤の固定法を確立し、その薬剤の徐放挙動を調査するとともに、薬剤を固定した基板上での細胞活性の評価を行う。
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