研究課題/領域番号 |
23246129
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
三木 恒久 独立行政法人産業技術総合研究所, サステナブルマテリアル研究部門, 主任研究員 (20415748)
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研究分担者 |
金山 公三 独立行政法人産業技術総合研究所, サステナブルマテリアル研究部門, 研究グループ長 (60356798)
重松 一典 独立行政法人産業技術総合研究所, サステナブルマテリアル研究部門, 主任研究員 (80357186)
関 雅子 独立行政法人産業技術総合研究所, サステナブルマテリアル研究部門, 研究員 (70630820)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 流動成形 / 木質材料 / 超塑性変形 / 金型成形 |
研究概要 |
本研究では、“木材の超塑性挙動”に着目し、ナノ~マイクロレベルでの微細構造変化の観点から変形メカニズムを解明するとともに、木材の超塑性現象を利用した変形加工技術の開発を目指す。具体的には、木材の非結晶領域に多く分布するナノ空隙と吸着サイトを把握・制御して、種々の界面状態を変化させ、木材に超塑性的変形を生じさせる。また、吸着サイトや吸着剤のナノ表面処理によって、変形と同時に寸法安定性や強度、難燃性能を付与することを目的とする。当該年度は以下の3つの項目を検討した。 1.ナノ空隙の把握と制御:木材中に存在する空隙半径r:10nm以下での空隙がすべり変形の起点になっていることを考慮し、種々の高分子の導入を図った。その結果、水系溶媒においてPEGで分子量20000の一部まで導入可能であり、木材細胞壁物性に影響を与えることが熱分析などにより明らかになった。 2.吸着サイトの把握と制御:これまで実施してきた水溶媒を用いた熱硬化性樹脂の吸着サイトへの導入以外に、予め吸着サイトを疎水化することによって、疎水性樹脂の導入を図れることを確認し、細胞壁内吸着サイトへのポリメタクリル酸メチル(PMMA)の重合に成功した。 3.界面すべりの制御:PMMA、メラミン系樹脂、アルコール溶性フェノール樹脂、ウレタン樹脂などを導入した木材の熱軟化特性、ならびに円柱圧縮試験によるすべり(流動)特性を評価した。走査プローブ顕微鏡によって細胞実質と細胞間層の物性値に変化があることが確認された。これらの軟化挙動、すべり現象(降伏挙動)、組織構造における物性値の差を総合的に検討することによって、木材で生じる超塑性的変形挙動の発生につい細胞間層が大きな影響を示していることがわかった。特に、PMMA樹脂では大幅に流動抵抗が低下することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
木材の超塑性的変形挙動の発現メカニズムの解明を目指した基礎的な研究を進めつつ、実用面での応用研究も同時に進めることができている。論文、特許に加えて、サンプル提供契約や企業共同研究契約の件数も増加してきた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、木材の超塑性的変形挙動を工業的に制御するための基盤技術を確立するために、木材に対してナノレベルでの微細構造を把握・制御(以下検討項目①②)して、そしてミクロ界面物性である超塑性変形能(検討項目③)を制御し、最終的にマクロな形状変化と物理的性質の制御(検討項目④)を図る。 ①木材のナノ空隙構造の把握と制御方法の検討:これまでに、主に水銀圧入法による空隙特性を評価してきた。今年度は、ガス吸着法によるサブナノオーダーの空隙に着目した検討を行う。 ②吸着サイトの把握および吸着剤の修飾条件の検討:今年度は、疎水化処理を施した素材に着目し、吸着サイトの量的・質的変化を把握する。さらに、フェノール樹脂やメラミン樹脂、ポリエチレングリコール、アクリル、ウレタンなどの高機能化を施す吸着剤の修飾手法を検討する。 ③細胞間すべり特性に及ぼす各種処理条件の影響と超塑性現象のメカニズム解明:①および②により処理された木材に対して、熱・圧力作用下における変形特性を実験的に調べる。特に、変形加工に必要な熱軟化特性や、細胞間すべり特性について、熱機械的分析手段を用いた検討を行う。また、細胞と細胞間層の力学的性質差を評価する走査プローブ顕微鏡観察を行う。一方で、各実験結果と顕微赤外分光法(顕微FT-IR)、核磁気共鳴分光法(NMR)やX線回折法(XRD)などを用いた構造変化を総合的に判断することにより、超塑性現象メカニズムの解明を図る。 ④各種高機能化性能に及ぼす処理条件の影響:所定形状(板状、3次元形状)を製品形状と設定し、①~③で検討した条件に基づき、木質材料の超塑性加工を行う。良好な形状付与が得られた試料について、高機能化性能(寸法安定化、短・長期的強度、難燃化)を評価する。得られた特性に対して、各処理条件のフィードバックを適宜行う。
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