研究概要 |
平成23年度の計画は、化合物と鋼のモデル界面に相変態の熱サイクルを与えて相変態を誘起し、組織の特徴の解析、共晶点レーザー高温顕微鏡による直接観察、化合物周辺の鋼組成の解析、化合物と鋼の結晶方位関係の解析を行って、化合物からの鋼の相変態機構を検討するとともに、メカニカルミリング法による化合物の高密度分散と鋼組織微細化の追究を行うことであった。 モデル界面の作成とそれによる化合物界面からの鋼の相変態の検討に関しては、鋼bccと格子整合性の良いB1構造を持つMgO,TiO,TiN、ならびに鋼bccと格子整合性は良くないものの鋼の変態を誘起することが知られているTi_2O_3を化合物として選択し、鋼の中に埋め込んだモデル界面を作成して、熱サイクル中の鋼の相変態挙動を調査した。その結果、化合物界面からの鋼の相変態は、構造が同じで格子定数もほぼ等しいB1化合物でも、変態開始温度、生成フェライトの形態、化合物および母相オーステナイトと生成フェライトとの結晶方位尾関係に差があることを統計的に有意な数の組織調査から明らかにし、第一原理計算と併せて、それらが化合物と鋼の界面エネルギーに起因すること、統計的には最も安定な結晶方位関係が優位に選ばれるが、その他の低指数面関係も選ばれうることなどが判った。これらの挙動および過程は高温顕微鏡を使った直接観察によっても確認された。またTi_2O_3に関しては鋼のオーステナイト化の過程で介在物と母相オーステナイトの間でTi,Mnの元素移動が起き、それが鋼の相変態、化合物と生成フェライトの結晶方位関係に影響していることを見出した。 またメカニカルミリングによる化合物分散では、MgO,TiO,TiN、いずれも従来にない鋼組織の微細化を得たが、変態生成のフェライト形態の差は顕著で、MgO,TiNでは比較的等軸粒であるのに対し、TiOでは針状のフェライト粒の交差組織となっていた。これらの結晶学的な特徴も明らかになりつつあり、今後その生成機構ならびに特性の詳細を明らかにしていく。
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