鉄鋼材料の溶接熱影響部の革新的な組織の微細化に向けて、鋼中に分散した化合物から変態生成する微細bccフェライトの活用を検討した。本年度はbcc Feと格子整合性の高いB1型化合物に着目し、化合物の単結晶を鋼中に埋設し鋼/化合物のモデル界面から変態生成したフェライトと化合物、変態前母相のオーステナイトとの結晶方位関係を検討し、その変態機構と 組織微細化指針をの検討した。実験は単結晶化合物粒をC-Mn鋼またはNi鋼の鋼試料の間に入れて1100 ℃で約50%圧下して埋設し、再度1150℃まで昇温し2400s保持して鋼をオーステナイト化した後、冷却して400~600℃で等温保持してフェライト生成させた。作製した試料の組織および結晶方位解析をSEMおよびEBSDを用いて行った。その結果、比較的高温で拡散変態で化合物から生成したフェライトはポリゴナル状の形状を有し、B1化合物とはBaker-Nutting(B-N)の整合関係を有するが母相オーステナイトとは方位関係がない。一方、比較的低温で変位型変態で生成する針状フェライトは母相オーステナイトとKurdjumov-Sachsの方位関係を有しているが、同時に化合物とB-N関係を有するものは一部であり、それ以外の低指数面の平行関係を有するものも見られた。B-N関係を有するフェライトは比較的短時間に生成したことから、化合物界面からの異質核生成が界面エネルギーのステップルールで進行することが示された。また、同じ変異型変態温度域で変態駆動力の小さいNi鋼を用いた検討においても、核生成初期のB-N関係の選択の優位性は確認された。以上の結果、B1型化合物の鋼中分散が低温変態の場合も鋼組織の微細化に有効であることがわかった。
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