研究課題/領域番号 |
23246137
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
井上 泰宣 長岡技術科学大学, 工学部, その他 (30016133)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 触媒化学プロセス / 表面界面物性 / 共鳴振動 / 固定化酵素 / 酵素反応 / 強誘電体 |
研究概要 |
本研究は、液相反応用の触媒活性化のための革新的方法の開発を目的としており、本年度は、固定化酵素の液相触媒反応の活性化に及ぼす共鳴振動効果を明らかにすることを行った。強誘電体結晶素子として、2.2 kHz の共鳴振動周波数を持つ多結晶チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)素子にグルコースオキシダーゼをシランカップリング法により固定化した後、設計・製作したマイクロリアクターに組み込み、共鳴振動状態の有無におけるグルコース基質酸化反応に対する酵素触媒活性の変化を調べた。酵素活性は、反応によって生成するH2O2量をクロノアンペロメトリ法により測定し求めた。反応温度278~300 Kにおいて、共鳴振動発生により酵素触媒活性が2~3倍増加すること、および反応温度依存性より、共鳴振動が反応の活性化エネルギーを13 %減少させることを見出し、共鳴振動が固定化酵素の活性化に有用であることを示した。さらに、共鳴振動による活性化は、グルコース基質存在下でのみ生じること、および、共鳴振動を停止した場合に、グルコース基質が無い場合には共鳴振動発生前の低活性にまで戻るが、グルコース基質が存在すると高い酵素活性状態が維持され続けることを見出した。酵素の固定化状態+基質分子の存在+共鳴振動の組み合わせが、固定化グルコースオキシダーゼ酵素の活性増加と活性化状態の保持をもたらすことを示した。この結果は、共鳴振動がグルコース基質と酵素間の相互作用を強め、特異的な活性化状態を形成させる効果を持つことに基づくものであり、グルコースオキシダーゼ酵素のフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)と2つのヒスチジンで構成された活性部位に対し、共鳴振動がグルコース基質の配位を促進する効果をもつことを提唱した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究で、液相触媒反応の中でも最も興味深くまた重要な固定化酵素による触媒反応に対して、共鳴振動によりその触媒活性が2~3倍増加する新規な現象を始めて見出すことができた。酵素固定量依存性、共鳴振動活性化条件の検討および反応温度依存性等に基づき、共鳴振動が、巨体分子である酵素に対して活性化作用をもつことを示せたこと、および共鳴振動による活性化が、酵素の活性構造と反応基質の相互作用に影響を与えて、活性化状態を作り出すことを明らかにすることができ、共鳴振動の効果について、非常に意義深い成果を挙げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、代表的な酵素であるグルコースオキシダーゼによるグルコース基質分子の酸化反応について、共鳴振動効果を明らかにできた。来年度は、この反応系に対して詳細な反応動力学的解析を行い、活性構造に及ぼす共鳴振動効果かの寄与を明らかにするとともに、他の種類の酵素として、補酵素をふくむガラクトースオキシダゼや立体選択機能を持つD,L-アミノ酸オキシダーゼ酵素等に展開し、固定化酵素の触媒作用に及ぼす共鳴振動効果の普遍性を確立する。
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