研究概要 |
本研究は、液相反応に対する不均一触媒の活性化のための革新的方法の開発を目的とし、触媒を固定する強誘電体基板に発生できる共鳴振動の効果を明らかにするものである。昨年度までに、グルコース酸化反応に対する固定化グルコースオキシダーゼ酵素の触媒活性化に共鳴振動が有効なことを示した。本年度は、固定化酵素に対し共鳴振動による活性化法が普遍性を持つかについて検証するため、酵素として、補酵素にCu金属イオンを含むガラクトースオキシダーゼ(GAD)、立体選択性をもつD-およびL-アミノ酸オキシダーゼ(それぞれD―AODおよびL-AOD)酵素を用いた。シランカップリング法を用いて強誘電体基板に酵素を固定化し、固定化酵素量は水晶振動子法によって測定した。反応溶液に溶解させた酵素では、共鳴振動によって活性化はほとんど見られないのに対し、固定化した,GAD, D-AOD,およびL-AOD酵素では、いずれの場合も2~4倍の活性増加が生じた。また、反応基質が存在しない場合には,共鳴振動を行っても、固定化酵素の活性化は生じないこと、さらに、共鳴振動停止後において、酵素の活性化状態は反応基質が存在する場合にほぼ保たれるが、反応基質が無い場合には徐々に消失することを見出した。共鳴振動により反応障壁が減少すること、本反応がミカエリス・メンテン式に沿って進行し、Lineweaver-Burkプロットより求められるミカエリス定数Kmが共鳴振動により顕著な減少を見せることを示した。共鳴振動は、固定化酵素の構造緩和を誘起し、反応基質分子と酵素間の相互作用が増す作用を持ち,これによって活性化が生じる機構を明らかにした。これらの結果から、共鳴振動は、どのような種類の固定化酵素に対しても活性化効果を引き起こす普遍性を持ち,きわめて有用な方法であることを結論した。
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