研究課題
ミリ波電磁ビームを用いた高エネルギー密度なワイヤレス伝送と,その航空宇宙応用の可能性を探求するための小型軽量な受電、エネルギー変換システムの開発を目的とし、以下の課題について研究を行った。(1)10メートルの自由空間を伝送するために直径24センチメートルに拡大したミリ波ビームを推進機側で再集光するために、昨年度はコンパクトな円錐テーパ型集光器を開発したが、推進機軸上に非常に強い電力密度ピークが形成された。そこで今年度は電力密度分布を改良するために、多角錐テーパ型集光器を開発した。光線追跡法シミュレーションおよび低パワーミリ波発振器を用いた実験を経て、八角錐のテーパ管を設計・製作し、推進機管内部に非常にフラットな電力密分布を実現することに成功した。(2)空気吸い込み性能改善のために新たに製作したチタン製先細リードバルブシステムと、上記の八角錐テーパ型集光器を組み合わせて推進機を製作し、ジャイロトロンを用いて放電試験および打ち上げ試験を行った。しかしながら、集光後の平均化されたビーム強度が逆に低くすぎて、デトネーション波を駆動できず、また残留プラズマによる異常プラズマ点火により推力低下が発生し飛翔には至らなかった.(3)ミリ波放電モデルの数値シミュレーションに関しては、我々の行った比較的低電界強度での実験とマサチューセッツ工科大学で行われた高電界強度での実験の両方の電離波面伝播速度を再現することのできる電離モデルを構築中である。特に低電力密度で放電が維持する物理メカニズムには、電子の拡散係数と高電界中の電離速度のモデルに見直しが必要であるというところまで方針が絞られている。
2: おおむね順調に進展している
ビーム制御・伝送技術に関しては、ほぼ目的を達成している。再集光部は、テーパの角錐形状を変えることによって、自在に電力密度分布を制御することが可能であることが示された。残る課題はデトネーション波を駆動するための最適な電力密度分布を選択することである。
円錐テーパと八角錐テーパの中間、例えば16角錐テーパや楕円錐テーパなどにより、ガウシアンあるいはそれよりも若干平坦な電力密度分布を形成する。それらを用いて放電試験を行い、ミリ波電力密度分布とデトネーション波伝播速度の関係、およびデトネーション伝播速度(加熱速度)と推力の関係を明らかにする。またそれらの実験結果より正しく理解するために、ミリ波の2次元数値シミュレーションと1次元ミリ波デトネーションの計算を行う。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
J. Phys. D: Appl. Phys.
巻: 46 ページ: 375201 (7p)
Journal of Propulsion and Power
巻: 29 ページ: 276-278
http://www.kml.k.u-tokyo.ac.jp/mwp/ja/top.html