研究課題/領域番号 |
23246147
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研究機関 | 独立行政法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
佐藤 英一 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (40178710)
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研究分担者 |
西元 美希 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 情報・計算工学センター, 研究員 (40450704)
志波 光晴 独立行政法人物質・材料研究機構, 材料信頼性評価ユニット, 研究員 (70242120)
砂川 英生 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙輸送ミッション本部, 研究員 (70598846)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | クリープ疲労 / 銅合金 / ロケットエンジン / クリープ・疲労相互作用 |
研究概要 |
現在,宇宙航空研究開発機構(JAXA)で研究開発が進んでいるLOX/LH2ロケットエンジン内筒にはCu-Cr-Zr合金が用いられている。この合金の劣化損傷過程の解明はロケットエンジンの信頼性確保に不可欠である。JAXA情報・計算工学センターにおいて実機燃焼室の三次元有限要素法(FEM)解析が行われ,塑性域の疲労と引張クリープ変形が重畳した,特殊な応力保持型クリープ疲労が生じていることが明らかになった.本研究では応力保持型クリープ疲労による銅合金の劣化損傷機構を明らかにすることを目的とした. 疲労サイクルの間に引張クリープを導入した応力保持型クリープ疲労試験および比較のためクリープ試験、疲労試験を行った。この結果、線形損傷則により予測される破断寿命よりも短寿命で破断することが確認された。また,クリープ変形量がサイクルの進行と共に増大し破断に至ること,このクリープ変形量の大部分は保持開始直後の遷移クリープ量によることが確かめられた。このようなクリープ挙動はこれまでにも報告されている. クリープ変形量の大部分を占める遷移クリープの発現要因として,直前の疲労による圧縮変形を検討し,異なる圧縮応力を付加したクリープ試験を行った.応力一定引張クリープの途中に異なる圧縮応力を負荷し再び同じ応力で引張保持した結果,塑性変形を与える応力を付加した時に顕著な遷移クリープが生じた.クリープ疲労中に生じる遷移クリープの発現要因は疲労による圧縮塑性変形に起因すると考えられる. 応力保持型クリープ疲労では、クリープと疲労の相互作用により、従来加算的に推測されてきた以上の損傷を受けている。これは疲労中の圧縮塑性変形により発現する遷移クリープの積み重ねによるものと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
応力保持型クリープ疲労の現象が明確になり、その発現をもたらす原因は”直前の疲労による圧縮変形”であることが解明された。これにより、次年度以降はその転位論的メカニズムの解明に進むことができるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
遷移的なクリープの発現はクリープ直前の圧縮ひずみに起因すると予測し、降伏点近傍の応力での引張クリープ中に塑性域までの繰返し圧縮を加える試験を行い、各サイクルのクリープ挙動の観察及び SEM による破面観察を行う。これにより、Cu-Cr-Zr 合金のクリープ疲労損傷過程における圧縮塑性ひずみと引張保持クリープとの相互作用の影響を明らかにしていく。
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