研究課題/領域番号 |
23246152
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 独立行政法人海上技術安全研究所 |
研究代表者 |
上野 道雄 独立行政法人海上技術安全研究所, 流体性能評価系, 運動性能研究グループ長 (60358405)
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研究分担者 |
田口 晴邦 (独)海上技術安全研究所, 流体性能評価系, 耐航性能研究グループ長 (70344455)
宮崎 英樹 (独)海上技術安全研究所, 流体性能評価系, 主任研究員 (10415797)
黒田 貴子 (独)海上技術安全研究所, 流体性能評価系, 主任研究員 (00415811)
北川 泰士 (独)海上技術安全研究所, 流体性能評価系, 研究員 (50579852)
白石 耕一郎 (独)海上技術安全研究所, 流体性能評価系, 研究員 (40586591)
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キーワード | 海難事故 / 自由航走模型実験 / 多方向不規則波浪場 / 船体運動 / 事故解析 / 再現実験 / 方向スペクトル / 船体流体力 |
研究概要 |
斜め遇波甲での渦速フェリーの大傾斜事故海難事故時の海象を波撮推騨に憂づき全周造波機を備えた実海域再現水槽において模型尺度で再現しました。その波浪場の中をカメラで模型船を認識して曳引台車が追尾する方法で模型船を自由航走させました。荷崩れ再現装麗を備えた模型船を用いた多数の実験計測で、比較的高い波が連なる出会波の条件でも実際に起こった危険な現象は発生しないことがわかりました。 ごく小さな集中波を海難事故を引き起こすきっかけとなる波として当該波浪場に重ね合わせたところ、大傾斜現象が起こることを確認しました。この集中波は元の波浪場と同じスベクトル形状を持ちながらもそのパワーが元の波浪場のわずか1%でも良いことが分かりました。目視では確認できない程度の集中波です。ただし、模型船の速度や針路、集中波と出会う時刻が少しでもずれるとまったく異なった現象となることも確認し、危険な現象の回避方策についても調査しました。多方向不規則波浪場の計測・解析システムを設計・製作し、上記実験に用いて基本的な検証をおこないました。 プロペラ荷重度を実船相似にした模型実験を可能にする荷重度変更自走試験システムの設計をおこない既存の装置を代用して基本機能の妥当性を調べる実験をおこないました。代用した装置では機構部の摩擦や慣性の影響が大きいため完全な自由航走状態は実現できませんでしたが、基本的な制御システムの妥当性は確認できました。 海難事故の再現に必要な流体力推定のための細長体理論による計算プログラムを新しいシステムとして整備してその検証をおこないました。流体力を計測する模型実験は2011年3月の震災で水槽が被害を受けたため延期になり年度内には実施できませんでした。既に水槽は復旧していますので次年度当初に実験をおこなう見込みです。海難事故を再現する理論計算は流体力データが取得できたのちに実施予定です。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実際の海象を模擬した多方向不規則波浪場の再現とその中での模型船を使った事故の再現は実海域再現水槽の機能を十分活用して当初の計画通りまたはそれ以上にに成果を上げることができました。荷重度変更自走試験システムについても基本的な考え方が妥当であることが確認できました。細長体理論のプログラムの新システムへの移行もほぼ完了しました。流体力計測のための実験とそのデータを用いた理論計算が震災のため遅れて年度内に実施できませんでしたが、既に水槽が復旧して年度当初に実験を実施したので全体としてはおおむね順調に進展していると考えます。
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今後の研究の推進方策 |
2012年度は横波中の転覆現象の再現と波浪場計測・解析手法の改良、海水打ち込み現象の解明、荷重度変更自走試験システムの製作、過渡応答の理論計算を計画しています。基本的には当初の計画通りに進める予定ですが、既に申請したように研究担当者1名がやむを得ず交代することになり、一部計画を変更する可能性があります。現在のところ、初年度対象とする海難事故の選択肢の一つとしていたブローチング現象を取り上げたいと考えています。ブローチング現象は転覆に至る可能性の高い重要な現象でしかも昨年度成果を上げることができた追い波中の大傾斜現象と関連が深く、昨年度に引き続き成果が期待されるからです。ブローチング現象を主としてできれば横波中の転覆現象にも取り組む計画で本年度は進めたいと考えます。
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