研究課題/領域番号 |
23246154
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
井上 千弘 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (30271878)
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研究分担者 |
畑山 正美 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (30447148)
須藤 孝一 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (90291252)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 微生物コンソーシアム / 土壌汚染 / 塩素化エチレン / 芳香族炭化水素 / 優占種 / 遺伝子解析 / 生物分解 |
研究概要 |
本研究ではバイオレメディエーションの適用範囲を拡大するために、微生物コンソーシアムが実汚染土壌中で対象汚染物質の分解能力を安定的に発現させるために必要な要因を解明することを目的とした。研究にはメタン生成細菌が共生する塩素化エチレン分解コンソーシアムと、芳香族炭化水素を優先的に分解するコンソーシアムの2種類を用いた。 前年度得られた2種類のコンソーシアムを用い、出発物質および中間生成物濃度の経時変化のデータから、速度論モデルを用いて液体培地における汚染物質分解反応経路の詳細を明らかにした。有害物質分解酵素遺伝子クローンライブラリーを作製し、100クローン弱の塩基配列の解析を行い、分解過程における酵素発現の変化の概略を検討した。また土壌培養系からDNAを抽出し、16SrRNA遺伝子のクローンライブラリーを作製し、液体培地での結果との比較を行い、両者で構成微生物種には大きな違いのないことを示した。液体培養系から抽出したDNA試料について次世代シーケンサーによるメタゲノム解析を行い、構成微生物種の概要を明らかにした。 芳香族炭化水素分解では、PAH分解能力の高いコンソーシアムを新たに作成し、構成微生物種を解析したところ、芳香族炭化水素の優先的分解を担っているのはAzospirillum属細菌であることが推定された。この細菌を単離し各種基質の分解能力を検討した結果、高いPAH分解能力が認められた。また、この単離株および分離源の集積培養を用いて液体培地中でPAH-脂肪族炭化水素の2成分培養を行った結果、いずれの培養でもPAHの優先的な分解が確認された。このコンソーシアムの群集構造を検討したところ、このコンソーシアムはAzospirillum属細菌を含む4種類の細菌が主要構成細菌として共生していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有害物質分解酵素遺伝子クローンライブラリーの作製が当初予定より時間を要し、期間内にリアルタイムPCRによる分解酵素遺伝子の発現量解析までは完了しなかったが、それ以外の研究項目は予定通り進捗した。 24年11月頃から塩素化エチレン類や芳香族炭化水素類の分析に必要なヘリウムガスの供給が全世界で停止しその調達が困難となったため、GC-ECDおよびGC-MSによる分析が一時遅滞したが、業者等の協力で必要量を確保することができ、計画遂行に必要な分析は実施できた。 分解酵素遺伝子の発現量解析も含め、研究は順調に進捗しており、25年度は当初計画通りの進捗が可能である。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画通り、2種の微生物コンソーシアムによる汚染物質分解経路の解析、有害物質分解酵素遺伝子クローンライブラリーの解析、リアルタイムPCRによる分解酵素遺伝子の詳細解析、土壌培養系からの遺伝子抽出とその解析、次世代シーケンサーによるメタゲノム解析を実施する。
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