研究課題
本研究は、(1) 放射線反応のダイナミックな反応過程の観測、(2) 水素臨界濃度の機構解明、(3) 10B(n,α)7Liによる高温水分解評価、の三つの柱で進めており、それぞれについて進捗状況を報告する。(1)新しいレーザーシステムを導入し、超高速パルスラジオリシスのシステムの更新をおこなった。従来に比べて、安定で、非常に使用しやすいシステムとなった。これにより、実験が格段に進展している。年度末までに、これまで高温水の実験は400℃までの測定であったのに対し、420℃に拡大してデータ取得に成功している。高温でのメタノール、エタノールの超高速パルスラジオリシスを実施し、多くのデータを取得した。現在データの解析を進めている。これにより、高温水、メタノール、エタノールを含む、高温の媒体での放射線反応の全容を把握したい。(2)水素抑制機構については論文として、投稿受理された。この過程で新たな問題として、幾つかの機関で使用している計算コードの比較の検討、PWRでの水素添加量の下限値の評価のための計算シミュレーションをすすめた。その結果、H + H2O -> OH + H2の反応速度定数が結果を大きく支配する必要があること、この定数については信頼できるデータが存在しないことが判った。現在、この反応を我々のシステムで決定するための実験を開始した。その結果、使用する水の純度が重要であることが判明し、超超純水を用意し更なる実験の準備に入っている。(3)モンテカルロ計算については結果が出てきたが、その信頼性評価を進めているところである。
2: おおむね順調に進展している
おおむね順調で、(1), (2) の当初の目標は達成できているが、研究の進展に伴い新たな課題が出現し、大きく展開している。最終年度に向けて研究を加速している。
以下の二点、大きな課題を想定している。(1)H + H2O -> OH + H2の反応速度定数の実験的な決定既に予備実験は二度実施し、実験で障害となる問題点は明確になった。(2)モンテカルロ計算の最終のまとめ。結果の精度、信頼性を評価する必要であり、もうひと頑張りである。
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