研究課題/領域番号 |
23246175
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
本間 格 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (90181560)
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研究分担者 |
笘居 高明 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (80583351)
宇根本 篤 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (10551525)
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キーワード | エネルギー効率化 / 資源開発工学 / 天然ガス / 水素 / ナノチューブ |
研究概要 |
本研究では気体・液体・固体とも異なる第4の物質状態である超臨界流体中でのプラズマなどの電気化学反応を利用して、クリーン燃料である水素と次世代蓄電デバイスの電極材料であるカーボンナノチューブ(CNT)の高収率の同時生成(コプロダクション)が可能な独創的なエネルギー技術の研究を行うことを目的としている。 本年度の研究においては、熱力学的平衡から大きくシフトした化学反応が起きる超臨界流体に、電気化学的な高ポテンシャル条件を加えることによる、革新的カーボンナノチューブの合成系作製の第一歩として、(1)超臨界流体電気化学セルの作製と、(2)電気化学反応によるカーボン合成に着手した。 (1)耐温300℃,耐圧25MPaのステンレスセルに電極端子が導入された、超臨界流体電気化学セルを作製した。本反応容器を利用することにより、二酸化炭素、アルコールの超臨界状態、または、水の亜臨界状態において、プラズマを含む電気化学反応を可能とした。 (2)常温常圧条件でCNTの合成が確認されている、アクリロニトリル水溶液の電気分解反応の、高温・高圧化による反応促進効果を検証した。その結果、常温常圧状態と比較し300℃,21MPaの亜臨界水状態において、カーボン体積反応の促進が見られた。これは、亜臨界水状態では、常温常圧水と比較し、イオン積が増大することで電気化学反応がより促進されること、高温かつ高拡散性の状態が化学反応一般に有利に働くこと、が原因であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度課題では、亜臨界~超臨界流体電気化学反応を駆使した、革新的カーボンナノチューブの合成が可能な電気化学セルの設計・作製と、高温高圧状態の適用による電気化学的反応の促進効果の実証を計画し、計画通りの進展を見せたため、達成度として、(2)おおむね順調に進展している、ものと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 超臨界メタン中での水素透過能の評価 パラジウム系合金膜における水素透過能は一般に表面状態に敏感であり、反応器内の各種のガス成分がパラジウム金属上での水素表面反応サイトに競争吸着するため、表面反応速度が著しく低下することが知られている。 本研究では水素透過過程のうち、表面反応により律速されている分離システムでの透過速度や律速段階を評価解析出来る実験装置を設計し、作製するとともに作動条件の把握を行う。また本研究の目的にもあるように、超臨界プラズマプロセスで生成するラジカルが水素透過性能に及ぼす影響について定量的に解析可能な装置システムの設計と作製も行う。このような新しい解析装置系をくみ上げることにより熱力学的平衡から外れた条件でのパラジウム表面での水素吸着および分離透過の速度論的解析を可能にする新しい実験装置システムを確立し、未知の水素透過メカニズムの探索的研究を行う。 (2) 水素分離・CNT同時製造コプロダクションメンブレンの作製 パラジウム系水素透過膜(厚み20-50 μm)表面にCNT成長触媒であるNi, Fe, Pd-Feなど、遷移金属触媒微粒子をスパッタ法、メッキ法や電析法などを用いることで高分散させることにより新規分離膜を作製する。コプロダクションメンブレンの試作には、申請者の研究室、あるいは種々の製膜装置を有している東北大学大学院工学研究科附属マイクロ・ナノマシニング研究教育センターの協力も得て行う。作製したメンブレンについて、東北大学多元物質科学研究所にて共用設備であるSEM及びTEMを用いて微細構造観察を行うことにより、触媒層の分散性を評価する。また、XRDを用いて組成及び構造解析を、BETにて比表面積を調べ、後に記述するCNT成長触媒能や水素透過能の評価に必要な基礎データを蓄積する
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