研究課題/領域番号 |
23246175
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
本間 格 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (90181560)
|
研究分担者 |
笘居 高明 東北大学, 多元物質科学研究所, 講師 (80583351)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | グラフェン / 亜臨界流体 / 電気化学 / ナノカーボン |
研究実績の概要 |
本研究では高温高圧流体中での電気化学反応を利用して、水素と、次世代蓄電デバイスの電極材料であるグラフェン等のナノカーボンの高収率同時生成(コプロダクション)が可能な独創的エネルギーシステムの構築を目的としている。本年度においては、高温高圧水中での電気化学還元反応を利用したPt基板上へのグラフェンの制御合成と、水素収量の評価を行った。 まずグラフェンの制御合成において、ラマン顕微鏡によるグラフェンの存在分布測定とSEM-EBSD(電子線後方散乱回折法)によるPt結晶方位分布測定を行った。両者を比較した結果、グラフェン非析出部位においては、最安定面であるPt(111)が多数を占めた一方で、グラフェン析出部位では特異的にPt(110)が多く観察されることが明らかとなった。既報より、Ptの電気化学的活性はPt(100)>Pt(111)であることが報告されている。Pt(110)はグラフェンとの格子整合性と、電気化学的活性の両方が高いことから、良好にグラフェンが成長する条件を満たしていると考えられる。一方で、Pt(111)は、グラフェンとの格子整合性が非常に高いものの、電気化学的活性が比較的低く、カーボン種の生成量が少なくなるため、グラフェン成長が十分に進行しなかったと考えられる。 また、グラフェン成長を行った後にリアクター内に存在している水素ガス濃度を分析したところ、プロセス時の電流プロファイルから算出した全電気量の9割程度が水素発生により消費され、残りが、カーボン生成に寄与する酢酸の電気化学的還元反応により消費されていることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
グラフェン制御合成の条件検討において、前処理段階における、予期しないアモルファスカーボンの堆積が発見された。本検討において、電気化学プロセスの効果を詳細に解析するためには、このアモルファスカーボンの事前完全除去が必要であり、これを可能とする前処理条件の検討の追加が必要であったため、当初計画からの遅れが生じた。
|
今後の研究の推進方策 |
水素とグラフェンのコプロダクションシステムの構築において、合成条件等の個別検討は概ね完了しており、今後は、システム全体としての評価と、その最適化を進める。
|