研究課題/領域番号 |
23247002
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
菱田 卓 学習院大学, 理学部, 教授 (60335388)
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キーワード | DNA損傷 / 出芽酵母 / DNA損傷トレランス / クロマチン |
研究概要 |
細胞内では、地球環境及び細胞内環境に由来する様々な因子によってDNA損傷が常に発生している。本研究では、自然環境レベルの紫外線損傷ストレスに対してゲノムの安定性を維持しながら増殖を可能とする環境適応型の損傷ストレス耐性機構の仕組みをゲノム及び代謝機能の両面から明らかにすることを目指している。本年度は、1)DNA損傷トレランスの制御メカニズムの解析、2)慢性低紫外線照射下の細胞を用いたメタボローム解析を中心に研究を行い以下のような結果が得られた。 1)Mgs1は大腸菌からヒトまで高度に保存されており、研究代表者による出芽酵母の研究から、DNA損傷トレランス経路の変異株であるrad18変異との二重変異株が合成致死性を示すことやDNA複製阻害応答に欠損を示すことを明らかにしてきた。今回、この合成致死を抑圧する多コピーサプレッサーの単離・同定を行った。その結果、100個以上の候補クローンを得ることに成功し、現在、その配列解析と抑圧効果について解析を行っている。 2)慢性的なDNA損傷ストレスは、DNA損傷だけでなく細胞周期やDNA複製、転写、さらには代謝機能調節など様々な生命機能に影響を及ぼすことが考えられるが、これらの機能制御がストレス耐性機能においてどのような役割を果たしているかは不明な点が多い。本研究では、増殖阻害時の代謝機能について明らかにするために、大阪大学大学院工学研究科の福崎研究室との共同研究により慢性紫外線ストレスを受けた酵母細胞のメタボローム解析を行った。現在までに特異的な変動を示す複数の化合物を見いだしており、今後の代謝プロファイリング解析によって損傷ストレス特異的な代謝機能調節機構を解明することが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2つの研究項目の結果及び達成度は以下の通りである。 1)DNA損傷トレランスの制御メカニズムの解析; DNA損傷トレランスの制御機構を解明するために、合成致死を抑圧する多コピーサプレッサーの単離を試みた。ゲノムライブラリーとして出芽酵母のゲノムタイリングクローンコレクションを用いて網羅的に探索を行った結果、100個以上のサプレッサー形質転換体を得ることができた。さらに、すべてのクローンを単離・精製及び塩基配列の決定を行った結果、増殖阻害のサプレッサーとして10種類以上のゲノム断片を特定することができた。今後、これらの断片に含まれる責任遺伝子の同定及び詳細な分子メカニズムの解析によってDNA損傷トレランスの新規の制御機構を明らかにすることができると期待している。 2)慢性低紫外線照射下の細胞を用いたメタボローム解析;野生型とrad18破壊株を独自に作製した慢性低紫外線環境下で酵母細胞を培養できる装置を用いて48時間培養後、代謝物質をGC-TOF-MS(ガスクロマトグラフィーと質量分析)によって網羅的な解析を行った。その結果、複数の化合物で代謝量の大きな変動が観察された。これらの化合物は、その特徴から核酸や糖などが含まれることがわかったが、大部分が未だ未同定の化合物であった。しかしながら、これらの化合物の中で有意にrad18破壊株において上昇している物質(化合物A)を同定することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
単離された多コピーサプレッサーに含まれる遺伝子には、クロマチン構造や細胞周期制御に関するものが多く含まれている。今後は、これらのゲノム断片内における責任遺伝子の同定を行う。さらに、慢性的な損傷ストレス環境におけるゲノム安定性維持には、個々の損傷応答機構に加えて染色体レベルで構造を制御する機構が重要な役割を果たしていると考えられる。したがって、クロマチン構造と制御機構がDNA損傷ストレス耐性において果たす役割を明らかにすることが重要である。そこで、ヒストン変異体を用いた慢性低紫外線損傷応答の解析や、多コピーサプレッサーの増殖阻害の抑圧効果の分子メカニズムの解明をさらに推進していくことで、新規の損傷ストレス耐性機構を明らかにする。さらに、Mgs1タンパク質の構造と機能に関する知見やその役割について不明な点が多く残されているため、Mgs1タンパク質の機能ドメインの同定や複製阻害応答における役割を明らかにしていく。 慢性的な損傷ストレス依存的に量の増加が見られた化合物Aに関しては、細胞内の合成経路の変異株を用いた研究や、培地等に添加することによる効果などを検証し、損傷ストレスによる代謝機能調節とその役割について解明する。
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