研究課題/領域番号 |
23247002
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
菱田 卓 学習院大学, 理学部, 教授 (60335388)
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研究期間 (年度) |
2011-05-31 – 2015-03-31
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キーワード | DNA損傷 / DNA複製 / DNA損傷トレランス / ゲノム安定性 |
研究概要 |
ゲノム安定性維持に関わるMgs1タンパク質は、大腸菌からヒトまで高度に保存されたAAA+ATPaseファミリータンパク質である。Mgs1のドメイン解析から、DNA損傷剤であるメチルメタンスルホン酸に対して高感受性を示すMgs1のC末領域の変異体を複数同定した。この領域は大腸菌からヒトまで高度に保存された領域であることから、Mgs1の損傷応答機能に重要な役割を果たしていると考えられる。さらに、この変異体タンパク質をウエスタンによって確認したところ、野生型とほぼ同じ発現量であった。したがって、これらのMgs1変異体はMgs1活性の制御ドメインとして機能していることが考えられる。これまでの研究から、MGS1と損傷トレランスに関わるRAD18の二重変異株の合成致死性を回避する多コピーサプレッサーを複数単離しており、クロマチンリモデリング因子などの染色体構造に関わる因子を同定した。そこで、染色体の構造を制御する機構が慢性的な損傷ストレス耐性に果たす役割を明らかにするため、ヒストン変異体を用いた損傷ストレスの影響を調べた。その結果、損傷ストレスの種類によって感受性が大きく変動する変異体を複数同定した。さらに、rad18変異株において、慢性的な低紫外線環境によって変動する代謝物質Aに関して、その合成に関わる遺伝子がmgs1 rad18二重変異株の合成致死性を抑圧する多コピーサプレッサーとして機能することを見いだした。このように、これまでの損傷ストレス耐性の機能解析から、ゲノム安定性や構造維持と代謝調節に関する複数の研究の接点が見いだされてきており、今後、これらの解析をさらに推進することで、ゲノムの安定性を維持しながら増殖を可能とする環境適応型の損傷ストレス耐性機構の仕組みの解明が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、慢性的な損傷ストレスに対する耐性獲得に関わる機構を、直接的なDNA損傷の修復に関わる機能以外に焦点を当てて解析することを目指している。本研究では、1)染色体構造と損傷ストレス耐性機能、2)DNA損傷トレランスの制御機構、3)損傷ストレスと代謝機能調節の3点にについて解析を行った。 1)染色体構造と損傷ストレス耐性機能;クロマチン構造の違いが異なる損傷応答にどのように影響するのかを明らかにするため、これまでに約400種類のヒストン変異体を用て、慢性低紫外線照射、メチルメタン硫酸、ヒドロキシ尿素の3つの損傷ストレスに対する感受性の定量解析を行った。その結果、感受性が損傷の種類によって大きく異なる変異体を複数単離することができた。また、DNA修復に関わる染色体構造維持タンパク質(SMC)であるRecNの解析から、RecNがDNA二本鎖切断部位に組換えタンパク質であるRecAによってリクルートされることを見いだした。 2)DNA損傷トレランスの制御機構;Mgs1のC末領域に活性を負に制御する機能ドメインを見いだした。mgs1 rad18二重変異株の多コピーサプレッサーの解析の結果、クロマチンリモデリングや代謝機能調節、細胞周期制御キナーゼなどを含むクローンを複数得ることができた。 3)rad18欠損細胞のメタボローム解析から、慢性紫外線照射後に変動する代謝物質をこれまでにいくつか同定したが、その中の1つの化合物が2)の多コピーサプレッサー遺伝子と関連していることが明らかになった。2と3は共に慢性的な複製阻害ストレスによる増殖阻害が引き起こされているため、この化合物が複製阻害時において重要な代謝プロセスに関わっている可能性が考えられる。 以上のように、各研究課題に対してそれぞれ興味深い結果を得ることができており、今後の研究によって新規のメカニズムの解明が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を基に、1)染色体構造と損傷ストレス耐性機能、2)DNA複製阻害の回避に関わる機能、3)損傷ストレスと代謝機能調節に関する今後の研究推進の方策は以下の通りである。 1)染色体構造の異常は、損傷を受けやすい構造的要因、損傷修復の抑制などの機能的要因、複製や分裂の阻害などが考えられるため、紫外線損傷抗体などを用いたゲノム損傷量の定量化や修復や複製等に関わる因子との二重変異株を構築し、損傷感受性の比較などをおこなっていく。 2)及び3)合成致死の抑圧効果を生み出している原因について詳細に解析する。例えば、サプレッサータンパク質変異体を用いた解析や、増殖阻害の抑圧効果とゲノム安定性との関連性の解析、DNA複製阻害の回避か阻害後の解消かなどについて解析する。さらに、増殖阻害の抑圧効果と化合物Aの代謝機能機能調節の関連性について細胞周期、遺伝子発現、ゲノム安定性等への影響を詳細に解析し損傷ストレスの耐性獲得における役割を明らかにする。
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