研究概要 |
減数分裂は、有性生殖を行う真核生物にとってゲノムを子孫に継承するための普遍的で重要なプロセスである。減数分裂においては、体細胞分裂とは異なり、父母に由来する相同染色体の組換えが起こる。相同染色体の組換えは、その後に起こる染色体の正常な分離に必須の現象であるが、相同染色体がどのように相互を認識して対合するかについては未だわかっていない。本研究では、単細胞真核生物の分裂酵母を用いて、減数分裂特異的に形成されるクロマチン構造を解析する。特に、染色体上に形成されるnon-coding RNAとタンパク質の複合体に注目し、相同染色体が互いを認識する仕組みを解明することを目的とする。 この目的のために、染色体の特定の領域を選択的に蛍光染色した分裂酵母の細胞株を用いて、相同染色体の対合過程を生細胞で連続的に追跡した。その結果、第2染色体腕部のsme2 遺伝子領域で、相同染色体の対合頻度が上昇していることを見いだした。当該領域を破壊すると相同染色体の対合頻度が低下し、転座すると転座先の領域で対合頻度が上昇することから、sme2 遺伝子領域が相同染色体の対合を促進することが明確に示された。さらに、sme2 遺伝子から転写されるnon-coding RNAが染色体に蓄積することが、相同染色体の対合促進に必要であることがわかった。この結果は論文として報告した (Ding et al., Science, 2012; Ding et al., Nucleus, 2012)。
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