研究課題/領域番号 |
23247004
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西村 欣也 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 准教授 (30222186)
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研究分担者 |
三浦 徹 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 准教授 (00332594)
岸田 治 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (00545626)
道前 洋史 北里大学, 薬学部, 助教 (70447069)
北野 潤 国立遺伝学研究所, 新分野創造センター, 特任准教授 (80346105)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2016-03-31
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キーワード | 表現型可塑性 / 表現型多型 / エゾサンショウウオ / トランスクリプトーム / 次世代シーケンサー |
研究概要 |
エゾサンショウウオを卵から幼生期にかけて、餌の有る無し、捕食者の有る無しの環境で飼育し、発育の幾つかの時期の個体から、組織別(脳、外鰓、頭部(脳の除く)、尾)のRNAを抽出した。RNAの質を検査した後、配列解析用のcDNAを作成、次世代シーケンサー(Hiseq2000)による配列解析を行った。 Hiseq2000を用いたトランスクリプトーム解析は概ね成功し、組織サンプルからトータル約6億ベースのreadを得た。それらのリードに対しアッセンブルを行った結果、平均長540ベースの740,944のcontigが得られた。そのうち、174,852 open reading frameについて、human, mouse, Xenopusのアミノ酸配列情報をqueriesとして、BLASTP homology解析を行った。その結果、エゾサンショウウオのcontigのおよそ65%が、既存のアミノ酸配列情報と一致した。ここまでの解析により、エゾサンショウウオのトランスクリプトームライブラリをde novoで作成することに成功した 一方、捕食者処理(ヤゴの捕食危機体験)、餌処理(オタマジャクシの餌環境体験)、対象区で表現型可塑性にともなう形態誘導が起こった個体の、脳、外鰓、頭部(脳を除く)、尾の組織の間で発現している遺伝子を調べるための解析は、1セットサンプルしか行う事が出来なかった。その理由は、年度内に充てられる予算と人的パワーに制限があったからである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エゾサンショウウオを卵から幼生期にかけて、餌の有る無し、捕食者の有る無しの環境で飼育し、発育の幾つかの時期の個体から、組織別のRNAを抽出した。RNAの質を検査した後、配列解析用のcDNAをTruSeq RNA Sample Preparation Kits v2 を用いて作成、次世代シーケンサー(Hiseq2000)による100 bp end のcDNAのpaired-end配列解析を行った。 結果から、SolexaQA programを用い、読み取り精度の低い配列を除外し、cut adapt programを用いアダプター配列を切除した。精製された配列に対し、Trinity programを用いアッセンブルを行い、Trans Decoder programによって、open reading frameの配列を構築した。 一連の操作を経て、トランスクリプトーム解析は概ね成功し、組織サンプルからトータル約6億ベースのreadを得た。それらのリードに対しアッセンブルを行った結果、平均長540ベースの740,944のcontigが得られた。そのうち、174,852 open reading frameについて、human, mouse, Xenopusのアミノ酸配列情報をqueriesとして、BLASTP homology解析を行った。その結果、エゾサンショウウオのcontigのおよそ65%が、既存のアミノ酸配列情報と一致した。ここまでの解析により、エゾサンショウウオのトランスクリプトームライブラリをde novoで作成することに成功した。 一方、捕食者処理、餌処理、対象区で表現型可塑性にともなう形態誘導が起こった個体の、各組織間で発現している遺伝子を調べるための解析は、1セットサンプルしか行う事が出来なかった。その理由は、年度内に充てられる予算と人的パワーに制限があったからである。
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今後の研究の推進方策 |
発現解析を1セットサンプルでしか行えなかったため、未解析で保存済みの組織サンプルを用いたRNA mapping解析の繰り返し実験を行い、結果を統計的検定の批判にたえうるものとする。 遺伝子発現パターン解析の結果、本研究で注目している幼生の表現型可塑性に関連すると考えられた遺伝子群の中から、その機能を解析するため候補遺伝子を選定し、機能発現スクリーニング実験を行うための方策について決定する事が課題となる。 表現型可塑性にともなうDEG (Differentially Expression Gene)の探索:孵化後0時間、12時間、7日の個体から脳、外鰓、頭部(脳を除く)、尾の組織を取り、数個体を1サンプルとして保存している。各組織の2サンプルからRNAを抽出し、昨年度作成したトランスクリプトームライブラリに対しマップし、マップされたcontigのカウントデータを作成する。昨年行った同様のマップデータ1サンプルと合わせて、3サンプルのカウントデータをそろえる。各処理、各組織、各発生時期の3サンプルのcontigカウントデータ(計72)が得られることになる。 統計的比較とためのデザインモデルを作成し、同一組織の同時期の処理間、同一処理内の時期間で、contigのカウント数を網羅的に統計検定し、発現量の異なる遺伝子をスクリーニングする。このスクリーニングから、可塑的形態変化の原因候補遺伝子が明らかになる。
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