研究課題/領域番号 |
23247004
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西村 欣也 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 准教授 (30222186)
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研究分担者 |
三浦 徹 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 准教授 (00332594)
岸田 治 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (00545626)
道前 洋史 北里大学, 薬学部, 助教 (70447069)
北野 潤 国立遺伝学研究所, 新分野創造センター, 特任准教授 (80346105)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 表現型可塑性 / 表現型多型 / エゾサンショウウオ / トランスクリプトーム解析 / 幾何学的形態計測解析 |
研究実績の概要 |
生物の表現型はある範囲に定まった一定性を示す。そのなかで、生物が環境に対応して著しく異なる表現型を示すとき、それらは表現型可塑性として生物学的研究対象となる。エゾサンショウウオ(Hynobius retardatus)の幼生は、捕食者生物、餌生物環境、同種の密度に対応して形態多型を示し、それぞれの形態は何らかの生態学的な機能を持つと考えられることから、表現型可塑性の進化生物学的研究のための魅力的なモデル生物であり、これまでに可塑的表現型発現についての幾つかの生態学的な研究が行われてきた。本研究では、エゾサンショウウオの形態や生活史の多型が可塑的に生じる生態学的背景、幼生の成長にともなう多型化のプロセスの追跡と、その背後にある生理的メカニズム、分子発生学的メカニズムを明らかにすることである。 捕食者、餌生物それぞれの存在によって特異の形態が誘導されたエゾサンショウウオ幼生個体の組織、部位から抽出したRNAについて、Hiseq 2000によるリードデータを取得し、アッセンブルによりcontigデータを得た。Contigデータに対し、ヒト、マウス、アフリカツメガエルのデーターベースから相同検索を行い、それぞれの誘導形態の遺伝子(contig)発現リストを得た。それらについて、組織、部位ごとで、異なる誘導形態間の発現量の比較解析を行った。発現量の違いが検出されたcontigデータ群に対し、遺伝子オントロジー解析を行い、形態(表現型)多型化の関連遺伝子を探索した。 形態誘導が起こった組織部位で、細胞分裂過程関連遺伝子群、核酸分解過程関連遺伝子群の発現量が増大したことが確認できたことから、一連の実験の妥当性が裏打ちされた。どちらの処理においても、脳において抗酸化プロセスに関連する遺伝子の発現量が増大した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エゾサンショウウオ幼生の遺伝子発現と形態発現の分子発生学的研究において、次世代シーケンサーによる網羅的解析をとおしたトランスクリプトームデータの作成、形態誘導過程における遺伝子発現量パターンのモニタリングの遂行に成功した。トランスクリプトームデータを得たことは本研究の進展のための本も基礎的で重要な達成ポイントである。一方、異なる誘導形態個体の間の遺伝子発現解析において、表現型多型のメカニズムを推測することができる遺伝子群の明確な差異を得ることができなかったことは残念なところである。そのため、網羅的なモニタリング結果のみに頼らず、内分泌学、発生学の既存の知識を本にした候補遺伝子の探索研究に重きをおく方向へと向かう必要性が出てきた。 生態学的研究においては、形態の多型化のプロセスをモニタリングするため、実験処理に対する形態の変化、違いを検出する方法、統計的検定方法を確立することが重要である。そのための方法として、Generalized Procrustes Analysisによる幾何学的形態解析法が非常に有効であることが分かってきた。形態発現と遺伝子発現の関連性の精緻なモニタリングを行う見通しが立った。
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今後の研究の推進方策 |
1)体外情報に対して体内の生理反応を起こさせる統御機構を有する脳(脳下垂体)におけるホルモン応答をモニタリングすることの重要性が増してきた。そのため、捕食者、餌生物の存在有無を操作した実験によって異なる形態をとった個体の脳下垂体におけるホルモン応答を内分泌学的、組織学的研究によって調べる。ホルモン応答と形態の変化量を結ぶパターンの検出を行う。 2)研究のターゲットとしているエゾサンショウウオの形態の可塑性は、孵化直後からの発生に伴う過程である。そのため、捕食者、餌生物それぞれの存在化における形態の発生軌道を定量的に追うことが非常に興味深い。生態学的な操作飼育実験で、幾何学的形態解析学の方法によって孵化直後からの形態発生をモニター解析する。 3)エゾサンショウウオの表現型可塑性は地域間で変異があることが伺えている。現時点までの研究では、その変異パターンは、それほど明瞭に提示されておらず、そのパターンの解釈も不明瞭である。本研究のこれまでの進展を元に、エゾサンショウウオの表現型可塑性の地域変異のパターン把握とパターン生成要因の探求へと、研究の歩を進めるべきと考えている。
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