研究課題
RHD3がGTP依存的に小胞体(ER)膜の融合、チューブ形成に関与していることを明らかにするために、RHD3欠損株からERを調製してin vitroチューブ形成活性を解析した。この欠損株は、連帯研究者である京都大学・西村いくこ教授の研究グループから供与していただいた。この変異株のERは、枝分かれが非常に少ないストランドのネットワーク、あるいは異常な会合体を形成し、その流動速度も野生種と比較し非常に小さい。野生株から調製したERでは、GTPを添加しなくともある程度チューブ構造が形成されるが、GTP存在下でさらに多くのチューブ構造形成が引き起こされた。一方欠損株ERではこのようなGTP感受性は検出されず、GTPの有無によるチューブ構造数の変化は観察されなかった。既に報告したRHD3機能阻害抗体を用いた解析結果も踏まえ、これらの結果はGTPによるER膜融合、チューブ形成の大部分に、RHD3が関与していることを示している。次にタバコやシロイヌナズナ培養細胞から調製したERの融合活性やチューブ形成活性におよぼす、ダイナミンやアトラスチンの阻害剤であるダイナソーの効果に関して検討した。どちらの活性も、50μM以上のダイナソーにより阻害された。50%のダイナミン活性を阻害するのに必要な濃度は15μMであることを考慮すると、この濃度はそれほど高いものではない。またタバコ培養細胞内の表層ERネットワークは、ダイナソーを添加することにより、非常に細かな網目あるいは袋状構造に変化した。この阻害剤がin vitroでGTPに依存したER膜の融合を阻害することから、膜融合がともなわなくても袋状構造が形成されるのか、またその形成機構は何か。あるいはRHD3を介さないGTP非依存的な融合機構が存在し袋状構造形成に関与しているのか、今後明らかにする必要があると思われる。
2: おおむね順調に進展している
GTPを必要とする小胞体(ER)膜融合のほとんど大部分は、植物のアトラスチンホモログであるRHD3により引き起こされることが示された。そして阻害剤ダイナソーを用いた解析により、アトラスチンとRHD3の一次構造は大きく異なっているが、それらによるER膜融合はある程度共通な機構で起こっていることなどもわかってきた。ただ細胞内ではRHD3活性が阻害されることにより、表層ERネットワークの形態が袋状に変化するが、この機構などは今後更に明らかにする必要がある。
植物培養細胞であるタバコBY-2細胞やシロイヌナズナMM2d細胞から調製した小胞体(ER)は、GTP存在下でRHD3により融合するが、流などの力が働かないとチューブ伸長は起こらない。一方アフリカツメガエル卵細胞から調製した(ER)は、アトラスチンにより融合し、更に力がなくとも自然にチューブが形成される。従って、なんらかの調節機構が存在していると考えれれる。来年度は、今まで同様RHD3に的をしぼりその活性調節機構を明らかにしていく。RHD3と相互作用する成分の細胞内局在やERと関連、表層ERネットワーク形成における役割、in vitroの系を用いてER融合やチューブ伸長への関与を調べていく。それと同時に、RHD3分子自体の修飾などによる活性変化なども解析することにより、植物のERネットワーク形成機構をより明らかにする。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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