研究課題/領域番号 |
23247010
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
竹井 祥郎 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (10129249)
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研究分担者 |
安藤 正昭 東京大学, 大気海洋研究所, 特任研究員 (10100976)
日下部 誠 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (40451893)
椋田 崇生 広島大学, 総合科学部, 助教 (60346335)
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キーワード | 浸透圧調節 / 脳ホルモン / 消化管ホルモン / 飲水行動 / トランスクリプトーム解析 / 海水適応 / イオン輸送体 / 腎作用 |
研究概要 |
本年度は、次のテーマの研究を進め、それらの成果は16報の査読のある英文原著論文、および1報の招待された和文総説として公表した。 1.リラキシン3と名付けたホルモンが魚類で多様化していること、および脳のいくつかの神経核に局在していることをin situ hybridizationにより明らかにした。多様化していることはリラキシン3の魚類における重要性を示しており、浸透圧調節における役割を今後明らかにする予定である。 2.魚類における飲水調節の中枢として、延髄にある脳室周囲器官である最後野に注目をしてその役割を明らかにした。すなわち、この血液脳関門がない部位は血液中のホルモンを受容する窓として働き、その部位を破壊すると飲水調節ホルモンを血液中に投与しても効かなくなることを証明した。また、この部位にホルモンを投与すると、飲水が変化することを明らかにした。 3.海水適応に関して、海水中のNaやClの濃度は体液の3-4倍であるが、MgやSO_4等の2価イオンは30-50倍になる。そこで、SO_4の調節に関して海水より淡水でその血漿濃度がウナギを用いて、腎臓がその調節に重要であることを分子生理学的に明らかにした。すなわち、腎尿細管で盛んにSO_4を再吸収をする淡水型から盛んに分泌をする海水型へのスイッチが海水中のClイオンにより行われること、またスイッチングにより発現が大きく変化する輸送体分子を同定すると共に、尿細管上皮細胞における局在を免疫組織化学的に明らかにした。 4.高血圧や心不全を増悪させる因子として盛んに研究されているレニン・アンジオテンシン系をヤツメウナギで初めて同定し、サメから人までよく配列が保存されていたアンジオテンシンが、円口類であるヤツメウナギではかなり配列が異なることを明らかにした。このホルモンをウナギに投与してもほとんど効果がないため、ホルモンと受容体の共進化という観点から興味がもたれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画と比較すると、研究の進行にともなっていろいろ面白いことが見つかってきたため、かなり変更を余儀なくされた。しかし、新しい方向の研究が大きく進展し、多くの原著論文として高いインパクトファクターの学術雑誌に多数発表することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題で最も注目していたVasoactive Intestinal Peptide(VIP)に関して、脳と腸双方に多量に遺伝子が発現しており、脳では飲水抑制作用が、腸ではイオンの吸収抑制作用が見られることをpreliminaryに見ている。しかし、このホルモンを担当していた大学院生が昨年末より体調を崩し、4月より休学している。本人はこの研究を継続したい気持ちが強いため、VIPの研究担当者を変えることなく、復帰するまで待ちたいと思っている。このことにより研究計画が大きく変わることはない。
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