研究課題
三年目となる25年度は、クマムシやセンチュウを中心とした微小動物の分類・生態研究の体制整備、解析が進み、成果も出始めた。特にクマムシについては多様性の概要が成果として出版間近となっているほか、飼育系を確立して繁殖生態に関するデータを取得しており、極限環境下での多様性と生態の総合理解が進みつつあることは画期的な成果と言える。またバクテリアに関しては、コケ坊主をモデル生態系とした物質循環経路の再構築が完了し、新たな手法による全体像の解析に向かって展開している。コケ植物については湖底に生育する水生蘚類2種の解析に加え、陸上に生育するBryum属蘚類についての分子系統解析が進み、昭和基地周辺にとどまらない南極全体の蘚類相の再検討に向かって新たなステップに進むことができた。未記載種も数多く見つかっているほか、分類学的位置の変更も行われ、南極生物多様性の理解に向けた大きな貢献ができたと言える。菌類については、湖底の蘚類と共存する菌類種の検討が進められ、これまで知られていなかった極限関係における新たな共生関係の存在が示唆される結果が得られた。現在の南極湖沼生態系の生物多様性の全体像が次第に明らかになりつつあると同時に、湖底堆積物を用いた古環境および古生物相の変遷解析が進み、湖沼研究へ時間軸を取り込む試みが進められた。特に、各生物の南極への侵入時期の特定、侵入イベントの推定については、生物、地学、大気などの幅広い分野からの検討が進みつつあり、新たな研究分野開拓に向けた芽が生まれつつあると言える。
3: やや遅れている
コケ植物、微小動物、バクテリア,菌類に関連する研究は順調に進んだが、菌類に関しては形態・分子系統解析を始めるまでに至らなかったため,次年度の集中課題と位置づけている。生物多様性データベースの構築に向けては,基本設計の検討に留まり,具体的なコンテンツの検討には至らなかった.
26年度は最終年度に当たるため,総合的な取り纏めを行う.昨年度から分類群毎の具体的な到達目標を設定してそれぞれ解析を進めているが、新体制の成果が十分に示されるまでに至っていない。研究集会を企画し、直接顔を合わせて研究計画の全体像を議論する場を作る。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (17件) (うち招待講演 2件)
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