研究課題
本研究では、再構築型無細胞蛋白質合成系PUREsystemを用いて、複雑なサブユニット構造を有する蛋白質複合体を合成することで、蛋白質複合体の形成過程を再現し、その会合メカニズムを明らかにすることを目的としている。まずターゲットであるATPaseに関しては、蛋白質を何も含んでいない脂質のみのリポソーム(LPs)と精製したF1複合体存在下のPUREでFoの構成サブユニットであるa、b、cを同時に合成した。その結果、ATPase依存的プロトンポンプ活性を検出することができた。また、F1存在下と非存在下で合成したFoの活性を比較したところ、両者の間に差は見られなかった。このことから、生体内でのFoF1の生合成では、膜部分であるFoと細胞質部分であるF1は共動しておらず、それぞれ独立して合成され、膜上でサブコンプレックス同士が会合するものであることが示唆される。さらに、FoF1を構成するすべての構成蛋白質8種(α_3β_3γεδab_2c_<10>)をLPs存在下のPUREで合成したところ、微弱ではあるが有意な活性を検出することができた。これは、FoF1のような巨大な膜蛋白質複合体でも、合成条件と脂質条件が適していれば、自発的に複合体を形成するポテンシャルが備わっていることを示唆する結果である。また、本系をもちいたこのような膜蛋白質複合体構築が、FoF1のみならず他のヘテロ型膜蛋白質複合体においても効果的であることを示すため、同じ方法で大腸菌由来のSecYEGトランスロコンについても合成を行なった。その結果、LPs膜上での複合体形成と、外膜蛋白質であるOmpA前駆体をモデル基質とした膜透過活性の検出に成功した。このことから、本系は蛋白質複合体の形成メカニズムを研究するシステムとしてツールとして汎用性の技術であるということがいえる。
2: おおむね順調に進展している
申請した計画のとおりに膜蛋白質複合体の合成に成功しているため、順調であると評価される。
膜蛋白質複合体のみならず、RNAポリメラーゼやリボソームの集合過程を明らかにすることを予定している。
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