研究課題
基盤研究(A)
本研究は,ヒドロゲナーゼの成熟化過程で過渡的に形成されるHypタンパク質複合体について構造解析を行うことで,成熟化過程の分子機構を明らかにすることを目的としている.構造解析に成功しているHypCD複合体については,Feイオンとの相互作用を調べるために,カロリメトリー(ITC)によってHypCD複合体とFeイオンとの結合条件や,Fe(II)イオンの酸化防止のための測定方法を検討した.嫌気条件下でのサンプル調製ならびに酸化防止のために亜ジチオン酸ナトリウムを測定用緩衝液に加え,HypCD複合体が二価のFeイオンを結合できることを確認した.一方,HypCまたはHypD単独では,Feイオンとの結合は確認できなかった.これらのことから,HypCD複合体形成がFeイオン結合には必須であることが明らかになった.さらにITCを用いて,Hypタンパク質間の相互作用についても詳しく解析した.ITCによる結合解析の結果,HypCとHypDの相互作用のKd値は0.14マイクロMで,比較的安定な複合体を形成していることが分かった.これに対して,HypEとHypCD複合体間の相互作用のKd値は1.9マイクロMで,三者複合体は比較的弱い相互作用によって形成されることが明らかになった.ヒドロゲナーゼラージサブユニット(HyhL)については,結晶化条件のスクリーニングを行った.HyhLとHypAとの複合体については,ゲルろ過カラムによって安定な複合体として精製することに成功し,結晶化スクリーニングを進めた.HypBホモログについては,ADP結合状態での構造解析を終了した.HypFについては,これまでに得られた結晶化条件の最適化を進めた.放射光による回折実験の結果,4.6A分解能を超える回折点を確認でき,分解能を向上させることができた.
2: おおむね順調に進展している
HypCD複合体とFe(II)イオンとの結合を,ITCによって確認することができた.ただし,HypCD複合体およびHypCDE複合体それぞれについて,Fe結合状態の結晶構造はまだ捉えられていない.HyhLとHypAを安定な複合体として精製することに成功した.HypBホモログについてはADP結合状態での結晶構造を明らかにした.HypFについては分解能の向上に成功した.
Fe結合型HypCDおよびHypCDE複合体については,嫌気チェンバーなどを使用して嫌気条件での結晶化を試みる.またITCの実験条件を最適化し,Feイオン結合の有無や親和性について明らかにする.HypBホモログについては,得られた結晶構造をもとに生化学的解析を進める.HypFおよびHypE-HypF複合体については,引き続き結晶化条件の最適化を進める.
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 3件)
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