研究課題
本研究は,ヒドロゲナーゼの成熟化過程で過渡的に形成されるHypタンパク質複合体について構造解析を行い,成熟化過程の分子機構を明らかにすることを目的としている.HypCD複合体については,Fe結合に関わると考えられるHypDの保存システイン残基(HypD-C38)の変異体を用いて,ITCによるFe(II)イオンとの結合実験を行った.Fe (II)イオンとの結合は確認できず,このシステインがFe(II)イオンとの結合に関わることが明らかになった.また,Fe (II) イオンとの結合には他の補因子が関与している可能性が示唆された.HypBホモログ(mmHypB)でのADPやATPとの親和性を調べるため,精製サンプルに結合していたADPについて,サンプルの希釈と脱塩を組み合わせることでその大部分を取り除いた.このヌクレオチドフリーのmmHypBは,ATPやADPに対するKd値が数ナノMであり,非常に高い親和性をもつことが明らかになった.特に,ADPの方がATPよりも親和性が高く,mmHypBの反応サイクルにおいてはヌクレオチド交換因子が関与している可能性が示唆された.HypFについては,セレノメチオニン標識タンパク質を調製し,ネイティブ結晶と同程度の結晶が得られた.別グループから報告されたN末ドメインを欠いたHypFの構造に基づく分子置換法と,セレノメチオニン標識タンパク質を利用した単波長異常分散法を組み合わせることで,HypFの全長構造を4.5A分解能で決定した.ACP,Znフィンガー,Middle.C-terminalの各ドメインから構成される全体構造から,ACPドメインの相対配置の柔軟性や正電荷に帯電した保存ポケットが明らかになった.ヒドロゲナーゼラージサブユニットHyhLとHypAとの複合体については,得られた微結晶の結晶化条件最適化を進めた.
2: おおむね順調に進展している
ITCによって,Fe(II)結合に関わるシステイン残基を特定することができた.一方,Fe結合状態を結晶構造で捉えることはまだできていない.mmHypBについては,ヌクレオチドフリーのサンプル調製に成功し,ATPやADPとの相互作用を明らかにした.HypFの全長構造を4.5A分解能で決定することができた.
Feイオンとの結合については,他の補因子が関わる可能性が示唆されたため,in silicoやin vitroでもスクリーニングを行う.HyhL-HypA複合体については,結晶化の最適化を進め,構造解析を目指す.mmHypBについては,ヌクレオチドフリーや非加水分解ATPアナログとの構造解析を行い,ATP依存的な機能発現の分子機構を明らかにすることを目指す.
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